信号現示に従って進行してください

信号現示に従って進行してください

異線現示

運転士をしていて困ることの一つに、本来進行するはずの進路ではなく、まったく別の進路へ進むようにと信号が現示された場合があります。
今は信号の制御はポイントや行先表示機などとともに、列車運行管理システムで制御されているのですが、いろいろな原因で間違って現示されるのです。

 

ずいぶん前の話です。
20年以上前になるでしょうか。
優等列車を運転していた私の1本前の普通列車が運転指令へ無線を入れました。
その時ははっきりとは聞き取れずあとで聞いた話なのですが、本来入線するはずの番線ではなく隣の番線へと進路が開通していたそうです。
その番線は本来私の担当列車が入線するはずの番線でしたが、ホーム自体は同じなので特に支障はありません。

 

運転指令の決め台詞

運転指令は
「それでは信号現示に従って進行してください」
と指示してきました。
進路が決まり場内信号機も現示されている状況で、一旦信号機を落としたとします。
そうすれば簡単にポイントを転換させて進路を変えられそうですが、鎖錠という仕組みによって一定時間経過しなければポイントは転換できません。
違う番線とは言え同じホームですから、運転指令は遅れを嫌ってそのまま入線させるのです。

 

次は私の列車です。
運転指令から
「先行列車は入場番線変更のため、〇〇列車運転士も入場番線を変更。信号現示に従って進行してください」

 

信号現示には従えません

入場番線変更の駅に近付いたのですが、指示されている進路は全く別のホームへと入線する進路です。
いくら運転指令が入れと言ったとしても、これはさすがにマズいだろうと思って非常制動で停車させ、運転指令へ確認の無線を入れました。
「〇〇列車運転士ですが、本当に信号現示に従って進行しても良いのですか?」
すると返ってきた無線は
「はいそのまま入線・・・少しお待ちください!」
運転指令のパネルには現在進路はどこへ開通しているかが分かるのですが、おそらくきちんと見ていなかったのでしょう。
私が無線を入れてから大慌てで信号を落とし、進路を変更させてと言った作業を行ったようでした。

それからしばらくの間は
「信号現示に従って進行してください」
という運転指令の決め台詞は聞かれなくなっていました。

 

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