初めて担当した編成
その駅は15‰ほどの勾配のある駅でした。
でも普段はその勾配を特に意識することなく、勾配にあったブレーキをかけて電車を止めていました。
その日は朝から雨が降り続いていましたが、特に強く降るということなくシトシトと降る程度。
ちなみにこの時の車両のハンドルを握るのは初めてでした。
25㎞/h以下という低速
なぜだか場内信号機に相当する閉塞信号機が警戒信号を現示していて、25km/h以下の規定速度以下で進入しました。
ただ下りこんでいるのでブレーキをごく緩く当てながらの進入となりました。
この車両は電制が相当きつかったのでみるみる速度が落ちていくので、仕方なく一旦ブレーキを全緩めにしました。
もちろん下り勾配ですので今度は速度が上昇していくので、軽くブレーキを当てました。
一旦全緩めにしてからブレーキをかけなおしているので、この時は電制は立ち上がらず空制のみでした。
※たぶん15キロくらい
軽くブレーキを当てているにもかかわらず速度が上昇していくので、直通管圧力で2kg/cm2ほどに追加しました。
※この当時はkPaではなくkg/cm2が圧力計の値として使われていました。約200kPaに相当します。
低速からの非常ブレーキ投入
不思議なもので2kg/cm2のブレーキをかければどの程度の制動効果があると体が覚えていて、自然と体を前に持っていかれないようにと踏ん張ります。
ところがこの時は全く制動効果が無く、逆に加速しているように感じました。
氷の上を滑っているような感じという表現がもっともピッタリです。
昔ながらの電磁直通ブレーキの車両で制動管を持っており、非常ブレーキを掛けると制動管の空気をすべて吐出することで最大のブレーキ(非常ブレーキ)がかかります。
制動管の空気を吐き出してしまうと、空気が貯まるまでは非常ブレーキが緩みません。
でも、このままじゃ冒進すると判断して非常ブレーキを入れました。
「バシャーーーン」という制動管の空気を一気に抜く際の音が響きましたが、それでも電車は止まる気配がありません。
結局ホームを15mほど飛び出して停車しました。
なかなか信じてもらえなかったのですが・・・
その状況を乗務区の助役や労組の役員さんたちに説明しても
「25㎞/hで非常ブレーキを入れてホーム内に止まれないって、行き過ぎてから非常ブレーキを操作しただろ?」
この時は上司も同僚も誰も信じてくれず、私は数日間乗務から外されました。
いわゆる日勤教育ですね。
この本の指定したページだけを読め、そして感想文と反省文を書け……
私が乗務から外されている間に、雨降りの同じ駅で同じように25㎞/hという低速で30mほどホームから飛び出す事象があり、そこでようやく乗務に復帰させてもらえたことがありました。
その車両はその後も雨天時にはあちこちの駅で過走騒ぎが続き、しばらくの間は運用中に雨が降り出すとすぐに車両交換するという異常な対応が取られました。