私が車掌をしていたのは昭和の時代だったのですが、その当時から会社の上層部はとにかく経費を削ることに血眼になっていて、車掌に対しては基本的に日中は車内灯を消せという大号令が発せられていました。
助役などの監督職は頻繁に車掌への添乗を行っては
「車内灯を消せ!」
と言いまわっていました。
今の時代ならばSDGsとかカーボンニュートラルの観点からといった言葉を使うのだと思いますが、1980年代にそのようなことは言われていませんでしたから、ただの経費節減のための方針と言うことでしょうね。
今も本当は経費節減が目的だけど、新しいお題目ができて言いまわりやすくなっているのかもしれませんが。
また同じように
「空調を切れ!」
ともよく言われました。
真夏に窓を開けるように放送して空調(クーラー)を切れとか、真冬は少しでも立ち客が出たしたら空調(ヒーター)を切れ。
とにかく車掌のころはしつこく指導され続けましたよ。
強く指導されていたということは、それだけ私が言うことを聞いていなかったということに他ならないのですが。
駅に停車している時って車内は暗いですよね。
ホームの上屋(屋根)のおかげで日陰になるから車内も暗いことが多いし、乗降の際には足元が見づらいと私は思うのですよ。
暗さのせいで車両とホームの間に落下したらどうするんだろうって思っていたのですけど、あまりそういったことに関心がない会社だったのかな。
その割には世間に対しては必死で安全性をアピールしていたけど、それだけ外面が良い会社だったのでしょうね(今も変わらないかも……)
さすがに起点や終点の駅では車内灯を点灯させないと真っ暗になるから点灯させていたけど、出発直後にすぐに消灯しろと言われるんですよ。
そして2~3駅後にホーム周辺にビルが建ち並んでいて昼間でもかなり暗い駅でまた点灯させるわけですが、その駅を出発直後にまたすぐに消せと言われ、しぶしぶ車内灯を消したら、
「車内灯を点けたり消したりするな!鬱陶しい!」
ってインターホンを使って運転士に怒鳴られたりするし。
添乗していた助役に
「運転士に怒られたけど、あなた(助役)のほうから車内灯の操作について指導したことを運転士に言ってください」
と言うと、今度はその助役が怒って次の駅で降りちゃうんですよ。
結局私は運転士からも助役からも良いようには見られず、社内の評価も地に落ちるという……
実際のところ、よほど太陽光が差し込みでもしなければ車内灯は常時点灯でも良いと思っていました。
意外と車内って暗いと思うのですがいかがなものでしょうか。
私は助役になって車掌への添乗時には、車内灯なんて消す必要ないよと指導していたのですが、こんなことばかり言っていればそりゃ傍系会社に飛ばされますよね(笑)
空調に関しても言えることなんだけど、せっかくクーラーを積んでいる車両なのに、窓を開けるように放送してクーラーを切れって、それじゃ電車にクーラーを搭載する意味がない。
クーラーの搭載車両が今夏も増えましたなんて会社としてPRしながら、現場で働く人間に対してはクーラーを使うなって指導するという面の皮の厚さ。
真冬に少し立ち客が出た程度でヒーターを切れば、どれだけ寒いのかを考えていないのでしょうね。
私が車掌になったころの客室のヒーターはさわると火傷するほどの熱さだったので、たしかに早めに切る必要はありましたがそれでもちょっとやりすぎだと思っていましたが。
その後は客室のヒーターをどんどん弱体化させて、ヒーター部を触ってもぜんぜん温もりを感じないほどのひどさに劣化させましたけどね。
劣化させた理由は火傷をしたり、靴やカバンが熱で損傷するケースが増えたからと理由を付けて言っていましたが……
今でも日中に車内灯を消して運行している列車、というか会社があると思います。
そのほとんどは車掌個人の判断で消灯しているのではなく、消灯するように強く指導された結果です。
そしてその指導は各会社の上層部の意思であるわけです。