非冷房車が走っていた頃
私が車掌になった1983年当時はまだ非冷房車が残っていて、担当していた車両が非冷房車の時に、
「一本前がクーラーのない電車だったから逃して待ったのに、この電車もクーラーがないのか。二本続けてクーラーのない電車を走らせるな!」
って真剣に怒鳴られたことがあります。
今ほど暑くはなかった1980年代とは言え、真夏にクーラーがあるのと無いのとでは快適度はかなり違いますからね。
実際には窓を開けて乗車しておれば、私はそれほど不快にはならなかったのですが、ただ関西人気質もあるのか、
「同じ金を払ってなぜ暑い思いをしなきゃいけないんだ!」
というクレームもちらほら。
駅勤務の頃ですが、
「いま乗ってきた電車はクーラーがなかったから、少し払い戻せ!」
と言って改札口にいた私にきっぷを渡してきたおじさんもいましたからね。
今もしも真夏にクーラーが故障したらどうするんだろう。
車両はどこかの駅で運転取りやめにして別の車両を手配するのだろうけど、その駅までお客さんを乗せる?
今の電車は開口部が少ないから風が抜けにくいし、電車に乗っているだけで熱中症になりそうだけど。
夏に暖房をつけるな!
車掌の頃はこのようなクレームはなかったのですが、界磁チョッパやVVVFの車両が多数を占めるようになり、抵抗制御の車両がかなり数を減らしてきた頃から増えてきました。
終点に到着したら降りてきたお客さん数人に、
「クソ暑いのに暖房なんかつけるな!」
「お前はどういう神経をしているんだ!みんな汗をダラダラ流して乗車しているのに暖房なんかつけやがって!」
直接クレームは言わないものの、汗を拭きながら私を睨みつつ改札へ急ぐ人も本当に多かったし。
私だけではなく何人かの乗務員は本社へクレームを入れられたらしく、
「聞かなきゃ仕方がないから聞くけど、暖房なんて入れてないだろ? 今年の夏はこんなクレームが多くて、本社の連中が聞き取って報告しろとうるさいんだ……」
先頭車両の先に自動秋札が並んでいるから、車掌よりも運転士が文句を言われることが多いという理不尽さ…
実際のところ抵抗制御の車両で、抵抗を床下に積んでいる車両は本当に暑いです。
真夏にホームを歩いていると、抵抗を積んだ車両とホームの隙間から熱気がかげろうのようにユラユラしている、そんな様子を見ることも少なくはありませんでした。
多くの車両が抵抗制御車の時代ならば、熱気がユラユラしているという程度でクレームなんてあまりなかったのですが、界磁チョッパやVVVFが主流になってくると、こんな熱気がユラユラしているところなんて見かけないですから、きっと乗務員が暖房をつけているんだ!っていう発想になっちゃうのでしょうね。
車内の床が焦げている
抵抗器から発せられる熱ってかなり高温のようで、車両によっては床が抵抗器の形に焦げていることもありました。
その焦げた所を触るとかなり熱いんですよ。
私はそんな写真を撮ったことはありませんが、Xを見ていると画像を上げられた方がおられました。
103系1200番台だそうで、私は乗ったことも見たこともありませんが…
さすがにここまで焦げている状態のものは見たことがなく、この場所に乗車しているとマジで暑かったでしょうね。
ブレーキ時に電制が働くと回生車両は電気を架線に返し、他の車両が使うことで省エネにつながるわけですが、抵抗制御は電制で発生した電気を抵抗器に流し、熱に変換して大気中に放散します。
抵抗器自体もかなりの熱を持つためにひどい場合には床材を焦がしてしまいます。
こうなることが分かっているから、昔はわりと厚めの床材を敷くことで焦げ目が付かないようにしていたのですが(焦げ目が付かないだけで熱さに変わりはないと思うけど、少しは断熱効果もあったのかな??)、聞いた話ですが、見た目にキレイな模様が入った薄い床材を貼って経費を落とそうとしたのか、○急の3000系列は床材を変えた途端に焦げ目がはっきり分かる状態になった…ということが平成の終わり近くまであったようですね。
今思うと、
ATSにかからない程度に目いっぱい突っ込んでは、そこそこきついブレーキを多用していた私は、この焦げ目の制作に深くかかわっていたのかも…
私がいた会社の床材はそこそこ分厚かったのか、薄っすらと焦げる程度でよく見ないと分からないくらいでしたけどね。