2021年04月10日に近鉄長野線で起きた事故は勝手踏切で発生しました。
以前にも少し触れたことがあるのですが、「勝手踏切」と言う言葉はマスコミでつけられた名前で、少なくとも私が勤務していた会社ではそのような言葉はありません。
鉄道会社が設置した正式な踏切ではなく、周辺の住民が勝手に線路を横断する場所のことですね。
あぜ道が線路によって分断されているように見える箇所などを「勝手踏切」として横断するケースが多いけど、路地の先の線路を「勝手踏切」として横断するケースもありますね。
「勝手踏切」をなくしてしまうことは簡単です。
フェンスなどを設置して線路内入れなくすればそれでいいだけ。
ところが長年「勝手踏切」を利用してきた地元の方にすれば、フェンスを設置されることで大回りを強いられる。
それならばこれまで利用してきた「勝手踏切」を正式な踏切にしてほしいとの要望が出てくるわけですが、現在基本的に踏切道の新設は認められないのです。
(道路との交差)
第三十九条 鉄道は、道路(一般公衆の用に供する道をいう。以下同じ。)と平面交差してはならない。ただし、新幹線又は新幹線に準ずる速度で運転する鉄道以外の鉄道であって、鉄道及びこれと交差する道路の交通量が少ない場合又は地形上等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。
何が何でも踏切の新設は認めない!
という書き方ではありませんが、ごく一部の例外を除き踏切の新設は認められてはいないので、「勝手踏切」を踏切へ昇格させることはほぼ無理と言う状態なのです。
事故を防止するという観点から言えば「勝手踏切」が使えないようにするしかない。
でも踏切の新設は原則認められていない現状から言うと、地下道や歩道橋のような設備を新設する以外に方法はないのです。
となる今度は階段の上り下りが大変となって、エレベーターなどの設置要求が出てくるでしょうし。
運転士の立場にしても、やはり「勝手踏切」は怖い存在。
遮断器などは当然無いわけですから直前に横断される危険性もあるし、離合負けの危険性がふつうの踏切以上に高いですから。
※列車が通過した直後に、反対方向からの列車のことを考えずに横断などのために線路内へ侵入して接触することを離合負けと言います。踏切上で列車同士がすれ違う時に警笛を鳴らすことがよくありますが、これは離合負け防止のためです。
「勝手踏切」を使わせないようにするためにフェンスを設置したものの、そのフェンスに穴をあけて通れるようにされたという事例も聞いたことがあるし。
解決方法が見当たらないのが現状なのかな。