京王線での事件以降も電車内での事件が続発しています。
大々的に報道されると模倣犯が出てくるという懸念がどうしても高まるのですが、その前に乗車中の車内で何か異変があった場合の処置として、車内非常通報装置の設置場所と押すとどうなるのかを知っていてほしいと思っています。
1両とか2両編成の電車ならば乗務員に直接緊急事態の発生を告げれば良いのですが、4両を超えてくると車掌からの目視だけでは車内の異常は分かりません。
なので非常通報装置の場所を把握しておくことと、緊急時には躊躇なく押すということを頭に入れていただければと思います。
車内非常通報装置は通勤型車両の場合は1両に2か所の設置が標準です。
車両の中央部付近のドアのすぐ近くが多く、車両によっては貫通路付近(連結面の近く)に設置されていることも。
多くの車両では非常通報装置の押しボタン付近にマイクとスピーカーが設置されています。
ボタンを押すと無音または小さな音が鳴動する車両もあるようです。
そしてボタンが押されると乗務員室内ではブザー等が鳴り、モニター装置に非常通報装置が押された車両番号が映し出されます。
その後車掌または運転士が応答しますので、どのようなことがあったのかを伝えてください。
ただ車内で人が暴れているとか火災が発生しているなどの状況下では、とてもじゃないけど乗務員に伝えることなんてできません。
だって避難して自身の命を守ることが最優先されますからね。
国交省からの要請により、何も応答はなくても複数個所の非常通報装置が押された場合には、乗務員は緊急時として扱うようにしろとのことですから、誰かが隣の車両で押したからいいや・・・とは考えずに、各車両で押していただければと思います。
なお車内非常通報装置の中には旧式のタイプがまだ残っています。
ボタンを押すところまでは同じなのですが、マイクやスピーカーが設置されておらず乗務員と会話することができません。
非常通報装置のボタンが押された車内には警報音が鳴り響き、同じように乗務員室内ではベルまたはブザーが鳴動しますが、何号車で押されたのかなどは乗務員には分かりません。
旧式の場合は乗務員がどの車両で非常通報装置が押されたのかを確認のために、車内に入って探すことになります。
朝のラッシュ時間帯にこの旧式タイプの非常通報装置が押されたために、多くのお客さんをかき分けながら何が起こったのかを確認しに行くのはホントに大変なんですよ。
なお旧式の場合には複数個所で非常通報装置が作動しても、乗務員室ではそのことが分かりません。
ただベルやブザーが鳴り続けるだけ。
できるだけ早く旧式の車内非常通報装置は無くしてもらいたいのですが、予算の関係で厳しいのかな?
どちらのタイプの非常通報装置も、ボタンが押されれば車両側面のランプ(オレンジ色)が点灯します。
※ドアが開いているときに点灯する赤いランプ(車側灯)とは別のランプです。
旧式の場合でもこのランプの点灯で非常通報装置が押された車両は分かると言えば分かるわけですが、乗務員室から顔を出したところで日中なんて点灯していること自体が分かりにくいっていうのが実情です。
それと車内非常通報装置が動作した場合、運転士は基本的には直ちに列車を停車させます。
私が所属していた乗務区では、駅が近くても関係なくすぐにブレーキを入れて列車を止めるという運用となっていましたが(規則上ではこれが正規の扱い)
別の乗務区では駅が近ければ駅に列車を止めるという運用が行われていました。
どちらが良いのかはケースバイケースなのでしょうか。。。
次はドアコックについてですが、車両内のシートの下やドアの上部などにあるドアコックは、ちょっと重いのですがレバーをパイプと並行の状態から直角くらいにまで回します。
するとドアが開かないように押し付けている圧縮空気が抜けて、ドアを手で開けることができるようになります。
※コックを動かしてすぐはドアはかなり重たいです。
各ドアにドアコックは一つ付いており、操作されたドアだけが手動でも開けられるようになります。
なお車両の外についているドアコック(車両側面に▽の印があります)は、その車両の片側のドアすべてが手で開けられるようになります。
なおドアコックを操作して空気が抜けても、ドアが開いていなければ運転台の「戸じめ合図灯」は消灯しません。
つまりは力行(加速)することができます。
ドアコックを操作して開けたドアを手で閉めても車側灯は消え、運転台の「戸じめ合図灯」は点灯し力行することが可能となります。
いったん圧縮空気が抜けたドアってかなり軽い力で動きますから、手でドアを閉めて電車が動いたとしても、振動で簡単に開いてしまいます。
走行中にいたずらでドアコックを開けられると、その空気が抜ける音に驚いて逃げていく人が多い。
放置されたドアコックですが、空気が抜けてどんどん軽くなったドアは振動で勝手に開いてしまい
「走行中に合図灯が消灯したので緊急停車しました!」
となって大騒ぎすることになるので、くれぐれも緊急時以外はドアコックは触らないでください。
走行中の列車の「戸じめ合図灯」の点灯状況を運転士が確認する義務はありません。
っていうか、基本的に前方注視のほうが主任務となります。
昔の車両は「戸じめ合図灯」が消灯するときや点灯するときには、リレー回路の“カチッ!”っていう音で気付くのですが、最近の車両はアナログなリレー回路ではないので音がしないんです。
なので走行中に「戸じめ合図灯」が消灯しても、運転士はすぐに気付かないかもしれません。
ちなみに「戸じめ合図灯」が点灯しないのはドアが開いている以外にも理由があって、例えば回路の断線があります。
で、乗務員室内にはリレーを短絡するスイッチがあって、「戸じめ合図灯」が消灯していてもこのリレーを短絡すれば力行(加速)することもできます。
闇雲に使うとドアが開いたままの電車もふつうに走行できてしまうので、今はこのリレーの短絡スイッチの使用にはかなりの制限が設けられています。