小田急の小児運賃一律50円のインパクトは大きいですね。
こども用ICカードの利用が条件とはいえ、子供連れで電車を利用するときの負担軽減はかなり大きい。
また小児用の通学定期券も1か月が800円、3か月が2280円、6か月が4320円というのもすごい策だと思います。
定期券の割引率が大きい割に、定期券利用者が集中する時間帯の経費が大きいということを考えれば、定期券の割引率を縮小させてもおかしくはないのに、小児用とはいえ通学定期券の割引率を大幅にアップするというのは本当に思い切ったなぁと思います。
私は関西の私鉄勤務だったのですが、もう20年以上前にあることを本気で行うことを会社の上層部が考えていたことがありました。
小児運賃だけではなく大人の運賃も全線で均一化した場合に、収支にどの程度影響を与えるかというものです。
当時は自動改札も券売機も設置が終わって、各駅の駅員の配置の再考(合理化)が落ち着いた頃でした。
※その後も何度も合理化やリストラは行いましたけどね
当時の初乗り運賃は120円とか150円くらいだったと思いますが
※運転士をしていると運賃が分からない・・・
これを全線で150円とか200円の均一料金とした場合の影響についてです。
料金を均一にすると設備にかかるコストがかなり抑えられます。
この当時ですからICカードなんてありませんから、乗車券を券売機で購入して乗車するわけですが、券売機は単機能のもので十分ですよね。
自動改札だって複雑な機能のものは必要ないし。
運賃とともに定期料金も均一化しちゃえば、自動改札で入場時にきっぷ類を持っているかをチェックすればよいだけで、降車時には特にチェックもいりませんからね。
※昔神戸の六甲ライナーの自動改札は出場時は近づけば扉が開いていたし、きっぷは自動改札の丸い投入口に放り込むようになっていた。きっぷが欲しければ入れなくてもよかったけど(JRや阪神との連絡駅以外)
そして乗越精算も必要がなくなる。
そうすると駅員の数をさらに減らすこともできる。
それでいて収益は十分に上がるということだったのですが、実現には至りませんでした。
ちょっと実施するには早すぎたのかもしれないですね。
この当時よく耳にしたのは、初乗り料金さえ払って乗車してもらえれば、会社としては損をすることはない。
1980年代から90年代にかけては、利用者数から計算すれば初乗り料金だけ払ってもらえれば収支はトントンにできる、ということだったらしいのです。
中には初乗り料金で乗車して定期券で出場する、いわゆるキセル乗車をされても会社としては痛くもかゆくもない。
それどころか定期券を所持している人が余分に初乗り料金を払ってくれるわけだから、会社としては儲けになるんだ、なんてことまで言われていましたからね。
今は利用者が右肩下がりで減少しているために、初乗り料金さえ払ってくれれば・・・というわけにはいかないのかもしれませんし、JRなど営業距離が長い会社では働いている人数と設備の費用負担から言って、初乗り料金だけではさすがに儲けが出るとは言えないと思いますけど。
小田急の場合は小児料金を引き下げることで、住みやすい沿線を印象付ける長期的な視野に立った作戦ですね。
それに対して私がいた会社の料金均一化案は、料金を引き下げることで設備の簡略化と社員の一層の削減を狙った作戦です。
今となっては料金均一化は難しいかもしれないですね。
設備やシステムが複雑になっていて、お金がかかりすぎていますから。