監査(検査)には会社の上層部によるもののほか、国交省鉄道局による監査もあります。
国交省の本局の役人ではなく、大阪の近畿運輸局の役人がやってきます。
このほかに鉄道会社が重大なミスを犯した場合には特別監査というものが行われ、この場合には本局の役人のほか、場合によっては国交大臣が直々に乗り込んでくることもあります。
私が在職していた30年以上の間に国交大臣が乗り込んできたのは1度だけでしたが。
会社の上層部による監査には運輸部門の取締役がやってくる部長監査、所属している課の課長がやってくる課長監査、係長クラスが行う係長監査なんてものもありました。
鉄道現業部門の課長や係長クラスなんて日頃から乗務区に出入りしているし、頻繁に添乗してきたりもしているから、わざわざ改めて監査なんてする必要はないと思うのですが、実は重要な意味を持っておりまして。
会社上層部である部長監査や国による監査が行われる1週間前くらいに、課長や係長クラスによる監査を行います。
言ってみれば本番前の予行演習って感じなんですよ。
課長や係長が普段とは違って細かい部分にまで目を行き届かせて、本社の上層部や国の監査によってダメ出しされないようにということですね。
本社の部長にチェックされれば、課長や係長のメンツは破壊されて先々の出世にまで響いてくるわけですから、そりゃ真剣な監査になります。
普段ならば添乗してきても世間話をする課長や係長であっても、監査となると顔を引きつらせながら細かい部分をみていきますからね。
それこそブレーキハンドルの持ち方が悪いとか、気笛ペダルへの足の置き方が悪いとか、普段ならば何も言わないことにまで事細かくチェックが入ります。
また国による監査の前には係長・課長・部長の順に予行演習となる監査が1週間おきに行われ、そのたびに助役以上は明けなのに夕方まで残って対応に追われるという、かなりハードな日々を送ることになります。
国にダメ出しをされると全社的な問題となり、担当部署のトップである部長の責任は重大ですからこんな感じでピリピリするんですよ。
普段から乗務員を含めて全員がチェックされるようなことがない仕事ぶりならば、監査が行われるとしてもそう慌てずに済むのですが・・・
昔はそこまで監査のたびにピリピリすることはなかったのですが、たしか部長監査の時だったかな。
監査のために添乗してきた部長が激怒することがあって。
ある支線を担当していた運転士が、運転時計を置かずに運転していたのです。
行きに添乗した運転士だけではなく、帰りに添乗した運転士も。
それも同じ運転士ではなく乗務交代して別の運転士だったのですが、2人ともに運転時計無しだったという。
それ以降ですかね、監査がピリピリした感じで行われるようになり、予行演習が必ず行われるようになったのは。