自動起床装置が導入される前
私が勤務していた会社では、乗務区の本区では自動起床装置が設置されていましたが、それは運転士になって以降のこと。
駅勤務のころは持参の目覚まし時計や、駅長室勤務の内勤がかけてくる電話(モーニングコール)で起きていました。
駅長室のある管理駅の改札勤務の場合は誰も起こしてはくれないので、目覚まし時計の持参は必須。今ならばスマホのタイマーがあるのでそれで起きられますが、スマホがない時代なので目覚まし時計がないと起きられません。
ただ昔の私鉄の改札なんて大半が年配者で、目覚ましがなくとも勝手に目が開くから会社で目覚まし時計を用意はしてくれなかったみたいです。
管区内の管理駅以外の改札勤務者には、内勤が各駅に電話をかけて起こしていました。
ほとんどの方は電話が鳴る前に起きていたので、起こすためというよりは起きていることを確認するための電話、そんな感じでした。
運転士になってしばらくするころまでは、本区では〝起こし〟と呼ばれる専門の方が乗務員を所定の時間に起こしていました。
台帳に翌日の出勤時間と起床時間をベッド番号の欄に書いておくと起こしてくれるのです。
体をポンポンと叩かれて、
「起きてや、時間やで~」
だみ声で起こしてくれます。快適な目覚め……。
元々駅勤務をしていた方でしたが、交通事故で改札勤務が難しくなり〝起こし〟勤務へ。
出勤時間が22時で翌朝7時までの勤務を毎日されていたんですよ。
自動起床装置の導入で快適な目覚め?
起こし専門の方が定年を迎える時期に合わせて、私がいた会社でも自動起床装置が導入されました。
時々タイマーのセットをし忘れて寝坊するといった記事を見かけますが、本区以外で仮眠となる区外泊の場合は、乗務員自らが自動起床装置のタイマーをセットするのかな?
私がいた会社では、本区の場合は仕業ごとにどの部屋のどのベッドで眠るのかが指定されていました。
ただし起床時間は人によって身支度にかかる時間が違うことから、仮泊施設の利用者一覧のベッド番号の欄に起床時間を書いておき、助役がタイマーを設定していました。
この辺りは〝起こし〟の方がいた時と同じです。
各部屋でタイマーを設定するのではなく、自動起床装置の操作盤は乗務区の助役の席の近くに設置されていて、時刻設定は助役のお仕事になっており、乗務員がタイマー設定をすることはありません。
時間になると布団の下に敷かれた風船が空気圧で膨らむことで無理やり起こしてくれるという、非常に寝起きの悪い朝を迎えることができる装置でした。
でもこの装置はとにかく音がうるさい。
風船を膨らませる前に空気を送り込む機械が作動するのですが、めちゃくちゃうるさい爆音クラスの掃除機並の音だったので、風船が膨らむ前の掃除機音で目覚めることがほとんどでした。
各ベッドの近くにリセットボタンがあり、目覚めてからボタンを押すと爆音送風装置が動作を止めます。
それと同時に、乗務区に設置している操作盤はリセットボタンを押した=起床したことを示すG(青)ランプが点灯し、出勤管理の助役も乗務員が目覚めたことが分かるようになっていました。
ちなみにこのリセットボタンを押さなかったら、セットした時間から5分経過後に操作盤で警報音が鳴ります。
この警報音がまたうるさくて乗務区中に響き渡り、助役たちが操作盤を見て何番のベッドなのかを確認しますが、たいていはリセットボタンの押し忘れだったかな。
でも中には爆音送風装置の音や風船がいくら膨らんだり凹んだりしても目を覚まさない猛者もいまして、その時は助役が寝室へ起こしに行っていました。
本区以外で泊まる時
区外泊の場合は自動起床装置はなく、本区からのモーニングコールや持参の目覚まし時計、決まった時間にけたたましく鳴るブザーなど、泊まる箇所によっていろいろでした。
ブザーですが駅でタイマーをセットして、ブザーが鳴って起きたらリセットボタンを押して止め、同時に起床したことを確認できるという感じですね。
本区とは違い希望の起床時間は聞いてもらえず、〇番ベッドは○時〇分とあらかじめタイマーをセットする時間が決まっていたので、身支度の早い人は乗務前に缶コーヒーを飲む余裕があるし、寝起きが悪く身支度にも時間がかかる人は出発時間ぎりぎりに電車に飛び乗っていました。
起床後には本区へ電話をして、体調について報告しなければいけませんでした。
今ならばタブレット端末などを使ってビデオ通話かな?
私が在職中は電話で報告するだけでしたが、アルコールチェックが必要になってからは、駅や運転指令の助役の前でアルコールチェックを受け、チェックを行った助役が本区の助役に異常の有無を報告という流れになっていました。