鉄道での事故というと人身事故をはじめ踏切での車との接触など第三者が絡む事故が圧倒的に多いのですが、鉄道の各種作業に携わる係員の事故ももちろんあり、不注意によるものや不意の事故もありますし場合によっては死亡事故もあります。
19日には肥薩おれんじ鉄道の鉄橋の塗装作業を行っていた作業員が、おそらく高圧2万ボルトの高圧線にふれてしまい、感電死するという事故が起きています。
詳しい状況は報道されていないので分からないのですが、現場の鉄橋はトラス橋のようなので架線などの近くを塗装していて触れてしまったのかもしれません。
鉄道の様々な作業の多くは外注されていて、おそらく今回の塗装作業も外部へ発注して作業員が派遣されていたのだと思います。
運転士目線で言うと、外注業者から派遣されてくる作業員の多くは、その危険性をどこまで認識してできているのか疑問に思うことがあります。
線路に隣接する場所で鉄道会社とは関係がない建物が建てられる時にも、列車監視員の配置が必要なケースがあります。
ビルの建設で大型の重機を使用する場合、下手するとその重機が列車と接触する危険性があるため列車監視員を配置して、列車が接近した時には重機を動かさないように指示したり、運行を支障する場合には列車止めるための措置を行う必要があるからです。
私がいた会社では、列車監視員の資格を得るためには教習所において数日間の教習を受講することになっているのですが、正直なところいま行われている教習内容では鉄道の危険性を伝えきれてはいない。
作業員の退避完了を運転士に示しているものの、列車監視員自身のいる場所が危なすぎることも多々あって、私は運転士時代に数回非常制動を入れて緊急停車したことがありますから。
なにせ中には線路に足を乗せながら作業員の退避完了合図を示す列車監視員もいますからね。
自分では安全だと思っているのでしょうし、直前に逃げたら問題ないと思っているのでしょうけど、逃げ遅れたらそれで終わりなわけで。
もしも接触した場合には運転士は必ずあとで言われるのですよ、警笛を吹鳴し非常ブレーキはかけたのかと。
警笛に対して文句を言う作業員もいるのですがそれは接触しなかったから言える話で、もしも警笛を鳴らさずに接触した場合には運転士に非があることになるから、いくら文句を言われようが警笛を鳴らさないわけにはいかない。
私がいた会社でも過去には外注の作業員が列車と接触した事故ありますし、軌道内を巡回していた工務関係の社員が列車と接触して死亡した事故もあります。
高架橋上を徒歩巡回していた工務関係の社員が列車の運転士に対して退避完了の合図を出していたものの、頭部が列車と接触して死亡。
この時の運転士は私の後輩だったのですが、退避完了の合図を出しているのが社員だったこともあり、少し線路に近すぎるような気もしたけど外注の作業員ではないため安心していて通過しようとしたら、かなりの衝撃と音が伝わってきた。
社員との接触事故だったためにその運転士はかなりショックを受けていて、傍目で見ていてもかわいそうでした。
運転士や車掌だと、車庫などで乗務員室へ出入りする際に落下して負傷するという事故も忘れたころに発生する頻度でしたがありましたし、人身事故後の処置を行っている最中に負傷することもあります。
特に早朝や夜間の人身事故の場合は暗くて足元が見えない中で処置を行うので、負傷する確率がかなり高くなります。
人身事故の被害者が感染性の病気に罹患(肝炎?のウイルスを保持)していたことが後で分かり、かかわった乗務員や監督職が全員病院へ行って検査を受けるということもありました。
人身事故で処置に関わった係員の負傷などはまず報じられることはありませんが、言ってみればもらい事故のようなもので意外と多いのです。