熱すぎるヒーターでやけどしたり…
私が車掌になったのは1983年ですから、もう40年が経ちます。
その当時はまだまだ抵抗制御の電車が多数走っていて、自動ブレーキの車両は私が担当していた路線にはすでにありませんでしたが、それでも古い車両の方が多かったです。
その古い車両は客室のヒーターがとにかく熱い。
シート下の金属の部分を手で触ることも難しいくらい、とにかくメチャクチャ熱かった。
この当時は車内が混んでくる前に客室のヒーターを切っておかないと、真冬でも汗をかくほど車内が暑くなってなっていたし、それ以上にやけどする人やカバンや靴などが焦げたり溶けたりする被害もよく出ていました。
車内が混んでくるとカバンなどをシート下に置く人が多くなりますが、昔の車両は押し込むほどのスペースがなく、ヒーターの金属製のカバーにカバンなどの持ち物を立てかけることしかできなかった。
その金属製のカバーは手で触れないほどの熱を持っていたので、ビニール製のカバンだと溶けてしまうのです。
同様に車内が混んでくると足を少し引き気味にして座りますよね。
すると靴が焦げたり、ズボンやストッキングが溶けるといった被害も出ていました。
とにかく古い車両を担当していると真冬に暑いと苦情をもらったり、持ち物の被害を訴えられることが本当に多かったです。
「車内の温度はお客さんがたくさん乗車してくれば自然と上昇する」
なので、混み合う前にヒーターを切れと会社側が言っていましたから。
ヒーターの設定温度を極端に引き下げ
90年代に入ると会社側は客室のヒーターの設定温度を下げたり、乗務員室のヒーターの容量をかなり下げ始めました。
他の乗務区の乗務員からヒーターが熱すぎるというクレームが出たり、一向に減らないヒーターによるお客さんの損害をどうにかしようという対策からです。
このころから本当に客室のヒーターの効きが格段に悪くなり、今度は寒いという苦情を大量にもらうようになりましたから。
以前ならば触るとヤケドする危険性が高かったシート下の金属製のカバーですが、今度は触ってもほんのりと暖かいか、下手すれば冷たくはないけど常温くらいとしか思わないほどに下げられてしまい、よくお客さんに怒られるようになりました。
「さっき乗ってた○○線は熱すぎるほどにヒーターが効いていたけど、お前の所はなんだこの寒さは? 暖かい電車から寒い電車に乗り換えたから体に堪える。本当にもう少し温度を上げてくれ!」
他線では熱すぎてコートを脱いで当社線の駅へやってきたけど、当社の車内に入ると手に持っていたコートを羽織ったり、シートに座る人がひざ掛け使っていたりしていましたから。
怒る気持ちも分かるんだけど、会社がヒーターの温度をどんどん下げてくれるから乗務員は何もできないし、ただ謝るだけ。
ラッシュで超満員になっても人の熱気で車内の窓ガラスは曇ったりはするんだけど、たいして温度は上がっていないし。
こうなってくると乗務員では対処のしようがないから困っていました。
空調の自動運転でましになった?
さすがに最近の車両は客室のヒーターに関してはマシになっていると思うけど、どうなのかなあ。
出庫したばかりの車両は車内がキンキンに冷えていて、それにプラスして貧弱なヒーターのおかげで全く温もらないし、休日なんて朝5時ころから運用されているのに、8時ころになってもキンキンに冷えたままの状態の車両が多数あったけど、ちょっと気になるなあ。
客室のヒーターがかなり熱かったころは、1時間もつけておいたら車内がガラガラでもそこそこ暖かくなっていたんだけど。
朝のラッシュ時間帯で超満員の車内だと、人の熱気によって湿度がかなり上がり立っている人は暑く感じますよね。
今の車両は冬季でも除湿や送風機能が使えたり、空調を自動運転にしておけば適切に切り替わったりしますよね。
私が車掌のころなんて除湿機能なんて付いていなかったし、送風も冬季は使えなかった。
真冬のラッシュ時間帯の車窓の結露を見ては、
「なぜ電車には除湿機能がないのかな、家庭用の安いクーラーにもそのくらいはあるのに」
ってずっと思ってましたよ。