2022年8月から9月ごろ、宇頭~新安城間を走行中の名鉄・名古屋本線の特急列車の最後部の乗務員室に無断侵入したとして、鉄道営業法違反の疑いで10代の男性が書類送検された。
乗務員室に忍び込んでミュージックホーンや警笛を鳴らし、その様子を撮影した動画が出回っていると名鉄に通報があり、警察に相談していたとのこと。
悪ふざけ程度の軽いつもりで行ったのかもしれないけど、だからと言って犯罪を見逃してはくれません。
いくつかのニュース記事を読んで回りましたが、名鉄では最後部の乗務員室の扉の鎖錠は行っていたそうですが、この容疑者によると誰かが扉の鎖錠を解いたような供述をしているらしい。
誰かがって、乗務員が解錠してその場を離れるとは考えられないし、この悪ふざけ男性の仲間というか一緒にいたツレが開けたのではないのかな。
気笛やワイパーなどを触られた程度では列車の運行に支障はありませんが、乗務員室内には機器やスイッチ類が多数並んでおり、NFB(ノンフューズブレーカー)を一つ落とされるだけで運行ができなくなる危険性もあるわけで、悪ふざけとか、乗務員室に入ってミュージックホーンを鳴らしてみたかったみたいな動機が許されはしません。
乗務員室の扉をはじめ列車の各部に使われているカギですが、基本的には「忍び錠(しのびじょう)」と呼ばれるカギ(車掌キーと呼ぶことも)でほぼすべての個所の鎖錠や解錠が可能です。
そしてこの忍び錠ですが、多くの鉄道会社の車両が同じものを使っています。
私が勤務していた会社で貸与されていた忍び錠で、今回の名鉄をはじめあちこちの会社の鉄道車両の解錠や鎖錠が可能なのです。
ヤフオクのほか鉄道グッズを扱うショップなどで忍び錠が出品されていることも多々あり、誰でも簡単に入手できる状態であることもマズいよなと、私個人的には思っております。
今はもう無いと思いますが、鉄道会社勤務であることを示したうえで忍び錠を制作販売してくれるお店もあったようで、私はそんな店がどこにあるのかも知りませんでしたので、同僚に買ってきてもらったこともありました。
なぜかその忍び錠は、私が在籍していた会社のすべての車両のマスコンキーとしても使うことができ、この1本で運転士の仕事すべてを賄うことができたのですが、ちょっと怖いですよね。
今回の名鉄の乗務員室に侵入した件ですが、さすがに看過できないことをやっていますし、書類送検されるも当然だと思います。
でもそれ以上に各鉄道会社のセキュリティに対する甘さがまた露呈したとも思います。
4年ほど前にこのブログでも取り上げたのですが、JR東海で留置車両から車両の機器が盗まれたことがありました。
この時にも乗務員室の扉が解錠されて侵入されて被害に遭っています。
各社でほぼ共通となっている忍び錠の使用は考え直すべきだと思いますけどね。
どこかの会社で使用されていた忍び錠によって他社の車両に被害が及ぶこともあるでしょうから、やっぱり各社ごとに別の規格のカギを使わなきゃと思うのですが。
まぁ私がいた会社はもっとセキュリティに対する考え方が甘くて、私が運転士生活の晩年になってようやく留置車両の鎖錠を始めた程度の会社でしたから。