通勤路線の車掌って最後部の乗務員室に乗務していて、客室側に向くように立っていることがふつうです。
するとこちらへ(車掌のほうへ)向かって歩いてくるお客さんがいるわけですよ。
「うわぁ、いやだなぁ、何か文句言われるんじゃないかな・・・」
すると乗務員室のすぐ近くの空いていた座席に腰を掛けるわけ。
するとなぜだかホッとするんです。
車掌ってお客さん側にずっと向いているので、こういった感情を持っちゃうのですよ。
私だけではなく、同僚の車掌が飲み会の席でこの手の話をよくしていますからね。
そうかと思ったら、それほど怒っていないように見える人がこちらへ接近してくることもあります。
するといきなり乗務員室の開き戸をノックしてきてクレームを言われたりします。
ほとんどは言いがかりのようなものが多いのですけどね。
“なんでこの電車は〇〇に止まらないんだ!”
“なぜこの電車は△△を通らないんだ!”
なぜって言われても停車駅じゃないから止まらないのだし、違う路線のことをいきなり言われても知ったこっちゃないし。
でも
“△△駅でこの電車に乗ったらいいって言われたのに行かないじゃないか!”
これが困るのです。
駅員がこの電車に乗れと言ったから乗ったのに、目的地に行けないじゃないかってクレームです。
駅員がウソを言うとは思えないので、おそらく聞き間違いだと思うのですが、そう指摘したら余計に怒り出すことが目に見えてますからねぇ。
こんな経験を幾度となくしていると、こちらへ向かって歩いてくるお客さんに対して恐怖感が芽生えてしまうのです。
2016年ごろに近鉄の車掌さんが制服制帽を脱ぎ捨てて、高架駅のホームから線路上、そして高架線路上から地面へと飛び降りて職務放棄した事件がありました。
たくさんのお客さんに絡まれるように文句を言われたことが原因だと思いますが、逃げ出したくなる気持ちもよーく分かります。
人身事故で抑止となるのは運転士や車掌が悪いのではなく、警察や消防の指示で止められているのです。
文句を言われたところでどうしようもできないですから、一車掌なんて。
ほとんど鬱憤のはけ口のように文句を言ってきますからね、これでもか!って感じで。
だからとにかくこちらへお客さんが歩いてくるだけで、恐怖心を覚えてしまう車掌が多いのです。