運転士って駅や車庫といった決まった場所に停車させるだけではありません。
踏切に何らかの異常がある場合、たとえば遮断棹が折れた場合などには係員がその踏切に急行します。
JRなどでは最寄り駅の駅員が駆け付けるようですが、私が勤務していた会社では踏切保安係という係員が急行していました。
ほとんどの方は踏切警手上がりの方だったかな。
普段は乗務区に常駐しており、踏切で何らかの異常があれば飛んでいくことになっていました。
もっとも早く異常のある踏切を通過する列車に飛び乗り、その踏切で降りて対応します。
自動車の通行が多い踏切の場合には手信号によって自動車に合図を出すなど、遮断棹の代わりに踏切の通行をコントロールしていました。
つまりは踏切に電車を止めることもあったわけです。
「〇〇踏切で止めてな」
運転台に乗ってきた踏切保安係はすぐにそう告げます。
駅間で停止するのでその旨を運転士が車掌にインターホンで通告します。
「〇〇踏切でいったん止まるから車内放送よろしくね」
ほとんどの車掌はそれまでに列車無線から聞こえてきた情報で
「さっき無線で言ってたやつですね、了解!」
って感じで答えてくるのですが、私の運転士人生の終盤の頃には
「は?何を放送するのですか?」
って答える車掌が多くなっていましたよ。
「駅間で緊急措置で停車するから、そのことを放送してください」
ここまで言えばしどろもどろになりながらも、何とか車内へ放送するものですが
「何を放送すればよいのかが分かりません」
「例文に該当するようなものが無いのですけど」
って答える車掌が増加しているように感じました。
「“×駅と△駅の途中で踏切安全確認のため一旦停止します”って言えばいいだろ」
たいがいの車掌は私が言ったとおりに放送していましたね。
だいたい車掌がなんと放送すればよいのかが分からないなんて、事故や地震発生時にはどうするんだろうって心配になりますよ。
まさか例文として挙げられている文章をそのまま放送する気なのだろうか。
もう少し頭を使って乗務してもらわなければ、お客さんも運転士もみんなが困るんですよ。
私なんかよりはるかに良い高校や大学を出て乗務しているのだから、そのくらいできると思うのですが。