たしか日曜日の夕方だったと記憶しています。
平日は学生でにぎわう駅でしたが、休日はひっそりとする駅の改札で座っていた時のことです。
電車から降りてきた女性が改札で座る私に向かって
「すいません、迷子なのですが・・・」
話をよく聞いてみると、一緒に買い物をして帰りの電車に乗るべく改札口を通ったまでは一緒にいた。
しかし休日でごった返していた駅ではぐれてしまったようで、その女性一人で電車に乗って帰ってきてしまったというのです。
「改札は一緒に通ったのですね?」
何度か私はその女性に聞いたのですが、改札は一緒に通ったというのです。
取りあえずはその女性の名前と、はぐれてしまった迷子の名前を聞きます。
そしてはぐれたという駅へ鉄道電話でたずねてみました。
「すいません、○○駅のこうすけと言います。迷子の方を預かっていたりしませんか?」
相手の駅からは
「迷子は預かっていないです」
との返事だったので電話を切り、管区長所在駅の首席助役に相談してみることにしました。
電話で首席助役とやり取りしていたのですが、迷子になったという人の年齢や服装を聞くのを忘れていたことに気付き
「すいません、迷子になっている○○ちゃんの年齢と服装を教えてもらえますか?」
と目の前に立つ女性に聞くと
「えっと、主人は47歳でグレーのズボンに水色のシャツを着て・・・」
あら?
迷子っていい歳したオッサン??
「あの、迷子ですか?それともただはぐれたお連れの方についての話ですか?」
そう聞くとその女性は
「はい、迷子になっているのはうちの主人です」
それを聞いた私は
「・・・」
もう一度はぐれて迷子になったであろう駅へ電話をし
「〇〇という中年男性の迷子の方を探しているのですが・・・」
「ああ、○○さんね、こちらの駅事務室におられますよ」
こちらの駅にいる迷子の奥さんに
「○○駅にいるということですが、どのようにお伝えしたらよいですか?」
と聞いたところ、もうこっちへ帰ってきてと伝えてほしいとのこと。
それを相手の駅へ伝えて迷子騒動は終了しました。
30年以上前の話なので携帯電話なんて無い時代ですから、はぐれてしまうとなかなか相手を見つけるのも大変でした。
ただはぐれた中年のオッサンを迷子と呼ぶのは勘弁してほしいです。
というよりも、そのはぐれたオジサンはなぜじーっと駅事務室にとどまっていたのだろうか?
まさか迎えに来てくれるとかって思っていたのかな。
迷子になった中年のオジサンは・・・