私が乗務員をしていた頃はホームドアって「ポートライナー」や「ゆりかもめ」などの新交通システムを除くとほとんど普及していませんでした。
と言っても今でも関西では普及がかなり遅くて、私が勤務していた私鉄を含め皆無と言っても過言ではない状態です。
お金儲けのための新線開業や沿線にショッピングモールを開業といった話はよく聞くのですが、従来からある鉄道施設への安全対策は国から言われれば仕方がなく行うが、それでも儲からないものにはお金を出したくないっていう姿勢がありありと現れているなぁって思います。
今回はそんな話ではなくて、東急田園都市線の高津駅でホームドアの一部が開かなかったことについて。
通常はIDタグやセンサーで編成両数を感知して自動でホームドアが開くのに、この時はホームドアのシステムのトラブルによって手動で操作が必要だったそうです。
会社側は車掌の確認ミスだと断罪しているようですが、ぶっちゃけて言うとエラーに対するバックアップ装置が備わっていないのはどうなのかなぁって思うんですよね。
操作パネルに何らかの表示はされているとは思うけど、すぐ目に付く大きさと色で“手動操作中”なんて表示があれば気が付くと思うのだけど。
手動と自動の切り替えを示すLEDの小さなランプが点灯していたとしても、分かりにくいですからね。
車掌がドアを開け忘れたり、ワンマン線区で運転士がドアを開け忘れるといったミスも少なからず発生しています。
きちんと確認して声に出し、喚呼しながら指差しすればミスは防げるって会社側は必ず言います。
でも車掌や運転士も人間ですから、つい操作が抜けてしまうことってどうしてもあるのです。
指差し確認と喚呼をしたとしても、その指差しと喚呼に意識が集中しちゃって肝心の動作が抜けてしまうことってどうしてもあるんですよ。
もちろん指差し確認と喚呼をするほうがミスの発生確率は相当減少すると思いますが、完全には防げないというのが乗務経験約30年の私の意見です。
まぁ練習のための練習じゃないけど、指差し確認と喚呼を行うための指差し確認と喚呼って感じでしょうか。
走行中の列車のドアが車掌スイッチでは開かないように、速度センサーを噛ませていたりはしています。(戸閉保安装置)
でもドアの開け忘れに関しては乗務員の注意力のみに頼っているのが現状です。
もちろん仕事ですから乗務員自身が責任感を持って職務に当たらなければならないのは当然ですけど、ミスをフォローする装置は数十年前からあまり進歩していません。
ホームの無い側のドアを誤って開けてしまうという事例もいまだに発生します。
※センサーでホームの無い側のドアは開かないようにできるのですが、あまり普及はしていません。
ミスをすればすべて乗務員が悪い。
会社としては乗務員を指導しなおします。
これだけで完全にミスが無くなるわけがないんだけど。
まぁ会社にすればお金は使いたくないけど、世間から注目されやすいホームドアは仕方がないから設置するか。
それ以外のことは乗務員がミスなく完璧に仕事をしろ。
失敗したヤツは配置転換してトカゲのしっぽを切っておけばいいだろう。
いくらでも車掌や運転士になりたいヤツはいるんだから。
私は在職していた間ずっと本社からのそのようなプレッシャーを感じながら仕事をしていましたよ。
今はどうなのかは分かりませんが・・・