レールの継ぎ目
今年(2024年)の7月は記録が残る126年間で最も平均気温が高かったとか。
この異常な暑さのために列車の運転を取りやめたり、運転はしていたもののレールの歪みを発見して結局運転取りやめとなるケースが、すでに散見されています。
レールは60℃までは安全に運行できるように製造されていますが、気温がこう高くなってくるとレールの温度は60℃を超えることも珍しくはなくなり、列車の運転ができなくなる状態につながってしまいます。
軌道は多少伸びても大丈夫なように、継ぎ目に隙間(遊間)を持たせています。
ただしこの隙間を車輪が通過する際には音や振動が発生して乗り心地が悪くなったり、沿線住民には騒音となるなど弊害もあります。
そこで振動や騒音を抑えるとともに、これまでよりも伸びを逃がせるようにレールを斜めにカット(トングレール)して組み合わせる伸縮継目もかなり一般的になっています。
この画像は新幹線などで見られる伸縮継目です。
株式会社総合車両製作所より画像をお借りしました。
係員による巡回添乗の強化
レールの伸びを逃がす工夫のほか、レールと枕木との締結方法の改善とか、枕木がバラストの中で動きにくくなる工夫のほか、レールが熱を吸収しにくくなる塗装など保守部門はかなり進化していますが、それでも基本は異常の有無を確認する係員による巡回です。
私がいた会社では予想最高気温が32℃以上(だったかな…)になると、乗務区の助役は巡回添乗の強化が指示されます。
レールが曲がっているのを発見するためでもありますが、その前に異音やいつもとは違う振動を発見するためです。
乗務区の助役は基本的に運転士経験者ばかりですし、日頃から添乗をしていますから〝いつもとは違う〟点を発見しやすいですから。
当然ですが保守部門の係員(保線や電気、通信など)も次々に巡回添乗にやってきます。
添乗に来た保守部門の係員に聞いた話では、実際に60℃までレールに異常が出ないとは思えないと聞いたこともあります。
レールにも様々な規格があって、レールそのものの材質も微妙に違うようですしね。
レールの歪みは脱線につながる
1977年 連日の暑さでレールがアメのように曲がり、名鉄パノラマカーが脱線。乗客ら5人が軽傷を負った。#昭和 #猛暑 #酷暑 #夏 pic.twitter.com/2WfkXMlAns
— 朝日新聞フォトアーカイブ (@asahi_photoarc) July 30, 2024
今とは設備の基準も違うとは思いますが、実際に暑さによるレールの歪みによって列車が脱線した事例もあります。
私自身は営業線のレールが曲がったという経験はありませんが、車庫構内のレールが暑さでグニャグニャに曲がっているのを見たことはあります。
車庫の裏手のほうであまり車両が入線しない線路だったので(作業用の車両の留置に使われていた記憶が…)、お手入れが行き届いていなかったためだとは思います。
何せ古くて半分朽ち果てている木の枕木を使っている箇所でしたから。
ただ復旧させるときにお古でしたがコンクリート製枕木を使ったため、その後はよく車両の留置で入線しました。
危ないということが分かっていたから、あまり入れないようにしてたのでしょうね。
今でもよくレール温度上昇の影響で運転休止したり、レールの歪みが見つかって運転休止ととなった事が報道されますが、ローカル線など利用者が少ない線区や会社自体にあまり余裕が無く、従来と同じ保守管理しかできていないところに尋常ではない暑さが加わって、レールが原因とみられる運休が発生しているのかなと。
昔ならば問題がなかったのだと思いますが、ここ数年の尋常ではない暑さの下では従来の保守管理だけでは対処が難しくなっているのかなと思ってしまいます。
こういうこともローカル線自体の維持が厳しくなっている一因なのでしょうね。