25年1月18日17時5分ごろ、南海電鉄南海本線の踏切で難波発和歌山市行きの普通電車と3歳の男の子が接触、幸い駅を出発直後でそれほど速度が出ておらず、男の子は3~4mほど飛ばされたものの耳の辺りに傷を負った程度で助かった。電車が好きな男の子で一人で家を出ていき、遮断桿が閉まった踏切内に侵入したらしいです。
ヤフコメには親が目を離したことが悪いとの意見が多数を占めており、中には手を離すなとか抱っこしておけなんて意見もあり、まあそういう意見ばかりになるだろうなと思っていた通りの展開になっていました。
私は本当に幸いに20数年運転士をしていて一度も人身事故を経験せずに済みましたが(未遂は何度もあるし、他の列車の人身事故に巻き込まれたことも多数ありますが)、同僚に聞く話ではやっぱり子供が絡んだ人身事故は生涯頭に残ると言い、大人が自らの意思で選んだ末の事故とはまったく違うと言います。
子供にとって鉄道とかバスって身近なんだけど、親が運転する車とは違って非日常的な乗り物。でもすぐそばにあるから近付けばすぐに自身の欲求を満たされる、やがてもっとそばに寄ろうとして親の目を盗んで……、みたいなところってあると思います。
いつもはフェンスや柵越しにしか見れないからもう少し近づいてみよと、子供心をくすぐる存在なのかなとも思うし。フェンス越しや踏切の外に立って電車に向かって手を振っていると、その様子を見た運転士が気を利かせて軽く気笛を鳴らしてくれたりなんてしたら、そりゃあ嬉しくなってまた近付こうとしますよね。
私もよく軽く気笛を鳴らしましたが、それに反対する係員の話を聞いてからはちょっと考えることが多くなりました。
その係員は踏切保安係(踏切警手)廃止後に、軌道内の標識整備や踏切の遮断桿折損時の人や車の往来整理など行う役職へ転換された方々で、人身事故時の処理も真っ先に行っていました。
子供は電車などの乗り物が好きなことは分かっているからこそと前置きしてから、
「気笛を鳴らして子供を惹きつけないようにしてくれ」
「親は列車を利用する時以外は駅にも子供を近付けちゃいけない」
「保護者が電車を見せようとフェンスのある場所へ子供を連れてくるのも考えた方が良い」
とやんわり言う係員と、
「ああやって連れてくるから子供の冒険心に火をつけて次第にエスカレートして踏切に侵入するんだ」
ときつめに言う係員もいました。
いつものフェンス越しや柵越しではなくもっと電車を近くで見てみたいと思い、子供が一人で踏切へやってくる。そしてもっと近くで見て触れるのではないかと踏切内へ侵入し、さらに踏切から線路へと入っていく…。
昔は線路沿いにはフェンスではなく古い枕木を組み合わせただけの柵など、今思えば簡易的な安全対策しかなされていないですから、線路内での子供の事故は今より多かった。だからよけいに、子供を線路沿いへ近付けてはいけないという思いが強かったのかなと思います。
夏休みや年末年始などに帰省した際に、第四種踏切や勝手踏切で子供が事故に遭ったというニュースが流れてくることもありますが、いつもお母さんやお父さんに連れられて見ている自宅近くの鉄道は、フェンス越しだったり高架上を走っていて近付けないのに、ここは目の前に線路があって近付ける…、そんな理由で事故に遭う子供も多いのかなとも思うし。
保育士さんが保育園児を連れて線路沿いへやってきて、通過する列車の運転士が軽くホイッスルを鳴らすとその保育園児たちが大喜びする。そんな動画を見るとほのぼのしますよね。私は今は鉄道業に携わっていないから同じようにほのぼのとした気持ちになるのですが、現役時代に聞いた話を思い出すとかなり複雑な気持ちになるのもまた事実です。
〝親が目を離すなければ良いだけ〟
それも正解の一つだとは思うけど、完璧に目を離すことなく家事を行うなんて絶対に無理ですしね。
家から一人で勝手に出ていかないようにするために、部屋の中でもハーネスでつないでおく?
せめて一人では線路に近付かないように、電車が見たいときは絶対にお母さんやお父さんといっしょに行くことをきつく躾しておく……、くらいしか策はないのかな。