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風が強いと車体が浮き上がるような揺れを感じて…

運転士

昭和53年 東京メトロ東西線 南砂町~葛西間の荒川橋梁
昭和61年 国鉄山陰本線 鎧~餘部間の餘部橋梁
平成17年 JR羽越本線 北余目駅~砂越駅間

おもな強風が原因の鉄道事故を掲げましたが、車両は本当に風に弱いものなのです。
橋梁上も怖いのですが、高架線で大きな道路をまたぐ場所(架道橋)や、周囲にビルが無く風を遮ってくれない場所なんて本当に怖いです。

都市部のビルに囲まれた高架線を走っている間は何ともないのですが、下をくぐる道路が何車線もある幅の広い架道橋に差し掛かった瞬間に、車体が横方向に振られてレールから車輪が外れるのではないかと思うほどに揺れます。
ビル風も怖いです。ビルの間の細い道だけど割と先まで長く続いている道って、その細い道の所だけ風が吹きつけてきたりしますが、そこを通りかかった瞬間に車両は横から殴られたように揺れますから。
またまったく風を遮りようのない築堤で、勾配のある曲線部分というのも怖いですよ。
まるで風が車体を床下の方から押してくるように感じることがあって、そのときはまるで無重力の空間を走っているようでした。何せレールの繋ぎ目を通過するときのジョイント音が、いつもとは違って本当に軽い音しか聞こえてこないのですから。

 

車両による違いもあります。
古い鋼製のボディで台車も金属ばねの車両は、少々の風でもビクともしませんでした。本当にきちんとレールを踏みしめて走っていました。
ところがとにかく軽いボディがもてはやされた時代の車両(1980年代以降)は、ボディはアルミで台車もボルスタレスで軽量化しているのに、クーラーは昔とさほど変わらない重いものを屋根にのっけているからそれだけでもバランスが悪い。
こんな車両で高架線をぶっ飛ばしているときに突風に煽られたら、本当に生きた心地がしません。
最近の車両はバランスをよく考えて作られているのでまだマシですが、それでも昔の重たい車両と比べると風には弱いという印象しかありません。

 

夜の春の嵐の中を、その頃の最新型の車両でぶっ飛ばしていた時です。
その車両はファンからは人気があったように思いますが、運転士からは車体が軽すぎて惰力で転がしているとどんどん速度が落ちていくし、車体のバランスが悪くて緩い風でもよく揺れると不評だった車両です。

やや勾配と曲線が組み合わさった高架線路上に差し掛かった時、甲高い音を残して突風が車体に当たってきました。
車輪の方からゴキっ!という鈍い音がしたかと思ったら、車輪がレールに叩き付けられるようなゴンゴンゴンという音と振動を感じました。
これはマズいと思って非常ブレーキで停車させ、強風の高架線路上へ降りて行って車輪の様子を確認しに行き、脱線はしていないことだけは分かったので最徐行で運転を再開しました。
もちろん列車無線で状況は報告していますよ。

翌日の夕方に乗務区の助役に呼ばれて小さな会議室(通称 監禁部屋)へ入っていくと、車両課や土木課の人たちがいました。
話を聞くと、私が停止した地点辺りのレールには何かが擦れたような傷跡があり、車輪には踏面以外に外側にも傷や凹みがあったといいますし、枕木にも傷が入っていたとか。
ひょっとすると脱線に近い状態、脱線はしたけど弾みでレールに戻ったとか……。

この件は口外しないでほしいと、当時の乗務区長ほか他の部の人たちから釘を刺されました。

 


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