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乗務員室内の落書き 運転する上で役に立つものも多かったけど

運転士

最近は乗務員室内の落書きがほぼなくなった

車掌として乗務を始めた1983年(昭和58年)ころにはあれほど多かった落書きが、運転士から助役になるころには乗務員室内ではほぼ目にすることはありませんでした。
私よりはるかに年下の運転士や車掌は、私らが若いころとは違ってお行儀もよくて上司らの指示を確実に守りますからね。

たとえば〝甘い〟といった落書きを乗車中の旅客が見た時に、
「この電車は大丈夫なのか?」
「この会社の電車はきちんと整備されていないのか?」
といった疑念を持たれるとかで、昔から落書きは禁止とは言われてはいたのですが黙認状態だったのですが、会社の上層部がやたらとCS(顧客満足度)を気にし始めたころから落書きに対して本当にうるさくなり、落書きした〝犯人〟を探し出すようになって空気が一変して誰も落書きしなくなった感じでした。

ご丁寧に乗務区の上司(助役等)に、
「今乗務してきた列車番号○○の車番○○の運転台の脇に、ブレーキが甘すぎるという落書きがありました!」
なんて報告する運転士や車掌が現れ、その車両を担当した乗務員一人一人に聞いていくんですよ。
「君が乗務したときには運転台の脇に〝ブレーキが甘すぎる〟という落書きはあったか?」
みんなが、
「気付きませんでした」
と答えれば良いのですがまたご丁寧に答える乗務員がいて、
「3日前に乗務したときにはありませんでしたが、昨日乗務したときにはありました」
こうやって犯人を絞り出していき〝犯人〟が見つかれば〝日勤教育〟の上に、どこか違う部署へさよならでしたから、そりゃあ誰も落書きなんてしなくなりますよ。

 

 

昔は落書きだらけ

それに比べて私が若かったころの乗務員室内は、そりゃ落書きがいっぱいありましたよ。

“○○タヒね!”

みたいなのは車両ではなく乗務区のトイレによくありましたが、乗務員室内で例えば車掌側の配電盤とか落とし窓のふちには、

〝ヒーター効かない〟
〝めっちゃ寒い〟
〝外の気温と同じ〟
〝メチャクチャ揺れる〟

みたいな落書きがいっぱいありました。
そういえばあまりにも揺れがひどい車両の車掌側の配電盤に、

〝Let’s dancing〟

と書いてあったのには笑いましたけどね。

 

実際には書くというよりは忍び錠(車掌キー)の角で削るというか掘るほうが多かったかですね。
よく冗談で、
「お前の忍び錠は角がなくなっているよな」
なんてことも言い合いしましたし。
あとは名札の安全ピンを使って彫っていたんじゃないかな。

全般検査や重要部検査で工場に入ったときに、車両課のほうで塗料を塗ったりシルバーのテープを貼って落書きを消すというか隠す感じでした。

一度車両部が激怒してきたことがあって、おそらく安全ピンを使ったのだと思いますが、車体に何やら会社の文句が書かれていた。細い字なのでよく見ないと分からない程度ですが、かなり赤裸々に文句を綴っていたらしいです。
車両部は車体を傷つけられたことに怒っていて、落書きの文言自体には理解を示したとかいなかったとか…。

 

 

落書きに助けられることも多かった

運転台への落書きの大半はブレーキに関係するものが大半でした。

〝甘い〟
〝激甘〟
〝雨天注意〟

みたいなものが多かったですね。
〝雨天時空制はエマ〟
なんて書かれている車両もあって、雨降りの時は空制が本当に効かないんだなって思ったりもしました。
ちなみに〝エマ〟とはEmergency Brakeから取ったもので、非常ブレーキを意味しています。

だいたいはブレーキ弁の周囲や注意喚起のステッカーなどにボールペンで書かれているか、スタフを差し近辺にもあったかな。中には圧力計の近くにマスコンキーか忍び錠で削るようにして書かれているものもありました。
デスク型の運転台となると書く場所がないからか、乗務員室の側開き戸のガラス窓の渕あたりに名札の安全ピンを使って彫られているものもありました。そういえばデスク型運転台に直接傷をつけるようにして書かれたものもありましたね。
だいたいは運転士の目に入りやすい、注意喚起のステッカーなどへの落書きが多かったです。

ブレーキ以外にもATSに関する落書きもあって、ATSの感度が良すぎるというか判定が辛いというか、運転士的には大丈夫と思って通過したらATSが動作するような車両があるので、
〝ATS注意!〟
みたいなことが書かれていましたね。

昔は新車が投入されて1カ月もすれば必ず何らかの落書きがありました。
初めて担当する車両(編成)なんて本当に未知の電車ですから、運転士としては本当に助かるのです。

運転関係の落書きについては車両部が怒ってくることはまずありませんでした。
補修や整備をするさいの車庫内での移動(入換運転)の時に落書きを見て、気を付けて移動させないととか、じゃあ書かれている部分について細かく見てみようと思うからと言ってましたね。
車庫内の移動の際に車両部などの係員が雨天時に怖い目に遭うことも当然あって、落書きは注意喚起みたいな捉え方だったと。

 

私が助役になった2014年ごろ、落書きが残っていたのは古い車両ばかりで新しい車両は本当に落書きなんて無かった。
だからと言ってブレーキの効きが悪いといった情報をまともに引き継ぐ若い運転士は皆無。
何があっても若い世代は交代は引継ぎで「異常ありません」以外は言いませんから。なので落書きがあるほうが運転士にすれば助かっていたと思いますし、昔の運転士は落書きの有無に関係なく、必ず要点を伝えてくれていましたしね。

 


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