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背中を見て仕事を盗まなきゃ上手くならないと思うけど

運転士

見習真っただ中の運転士見習

私が在籍していた会社では、運転士見習は真夏から約4カ月間の学科教習の後、11月の末ごろから翌年の3月の中頃から下旬にかけて実務見習が行われます。
この記事を書いているのが1月中旬ですから、そろそろ指導員(師匠)からの指示が減少して見習自身の考えと勘によって運転しだすころかな。

入試のシーズンと重なるこの時期、運転士見習は今まさに勉強して覚え込もうとしていて、まだまだ失敗することも多いと思います。
特に止めるつもりでブレーキをかけたものの停止目標に止められず、ホームからはみ出すことを〝すべる〟と言っていたのですが、受験生にとっては縁起でもないからすべるなよなんて師匠にもよく言われました。ただ止めるつもりでブレーキをかけているのに止められなかったという経験は、運転士見習は何回かは経験するほうが本当は良いんですよね。この感じだと止まらないとか、これだとギリギリ止まるっていう感覚を早めに養っておけば、操縦試験を含めて見習自身のいい勉強になりますから。

 

 

見習が終われば見た目は一人前だけど

運転士の見習って言ってみれば〝専門学校〟と同じだと思うんです。
関係法規から車両の構造、運転理論などの学科教習と、実際にお客さんを乗せた列車で運転の仕方を習う実務教習。半年以上の見習生活のあと操縦試験を受けて合格すれば免許証(動力車操縦者免許)をもらい、一人前に列車を運転する。

でもベテランとは何かが違います。
確認の方法一つとっても、ベテランは同時にいくつかをこなしていきますが、新米さんは一つ一つ確認していくからどうしたって時間がかかる。やっていることは新米さんのほうが正しいと思いますが、実際に列車を運転していると新米さんは時間にかなり追われながらの仕事ぶりになってしまう。
決められた時間内に的確にこなしていく術は、やはりベテランのほうが勝っています
※ベテランの中には的確にこなさず、省略して時間を確保するためにミスを引き起こす人もいるわけですが

新米運転士が一人で運転を始める時期と、新入社員や新入生が電車を使って通勤通学を始める時期って重なってしまうのですが、見習中に習ったとおりに混雑を考えてブレーキをかけたのに客室から「ドドドドドッ」という、将棋倒し一歩手前の足音を聞き、ビビってしまって次の駅からは見習中に習ったことがないような長い距離を取ってブレーキをかけ、どんどん列車を遅延させていく…、そんな光景もよくあります。
超満員の列車に乗ったことがなく慣れていない人たちが多数乗車していると、特に問題のないブレーキのかけ方をしても踏ん張りきれずに客室から「ドドドドドッ」という恐怖の音が聞こえてきたりするのです。
2~3駅同じようにブレーキをかけていれば新入社員や新入生たちも慣れてきて、ブレーキがかかれば踏ん張れるようになります。だからベテランさんたちはあえてブレーキのかけ方を変えなかったりもします。(いつも通りだから変える必要性を感じないし)

顔を見れば若いか年輩かの区別はつきますが、運転している様子からはベテランか新米かの区別なんてつきませんが、細かい部分の差がたくさん重なって大きな差になって現れるわけです。

 

 

仕事は自分の目で見て盗むもの

あくまで私が在籍中に感じたことですが…。

運転士見習が終わると一人前で、ベテランたちと対等だと考えている人が多かったように思います。
私も駅や車掌の時には見習が終われば一人前だと思っていましたが、だらしなさそうな車掌の中にもきちんと工夫したり、その人独自の仕事を進め方を持っているんだなと気付くことがあり、そこからは本当に仕事に対する見方が変わりました。

例えば乗務中に振替輸送受託の無線が入ったとき私はずっとただ聞くだけでしたが、あるベテランさんがメモに走り書きで書き留めていた場面を見たことがあり、
「書き留めているのですか?」
「あほやから覚えられないからな」
そう言って笑いながら答えていたのがきっかけだったかな。
※運転士の晩年になって、私とあまり年が変わらないベテラン車掌も同じように書き留めていたところを見たことがあり、ベテランってそういうものだよなと思ったことも。

ところが、見習が終われば俺は一人前の運転士だと言わんばかりの人が増加し、それに比例するかのようにとんでもなく下らないミスを犯す人が増加した、そう感じています。

どんな仕事でもそうだと思いますが、「この人のようになりたい」とか「こんな仕事ぶりに憧れている」、だからそういった人や事に近付くために、直接教えを乞うのが恥ずかしいとしても後ろからこそっと覗いて仕事ぶりを盗んでいく、そう言うのって大事だと思うんですよ。
私の場合はこういう運転がしたいと思って車内から毎日のように観察していた運転士は、実は運転がめちゃくちゃ下手で、真似することでどんどん運転が下手になっていき見習中に当たり前にできていたことまでできなくなるという悪循環にも見舞われましたが…。
その後多くの車掌から〝下手〟〝遅い〟と言われ嫌われていた運転士の操縦法を見て、奥が深いことに気付いて盗んでいきました。

乗務区の休憩所で大口を叩いて偉そうなことを言っている経験3年未満の運転士が、とんでもないミスを犯して職場を去って行く様子を何度も見てきたのですが、運転士見習中に習ったことからの積み重ねがなかった、そんな人ばかりが去って行ったように思います。

専門学校や大学等の教育を受けただけでは役には立たない
最低でも3年は積み重ねが必要

こんなことを思う私はただの老害かもしれないですね…。

 

 


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