最高速度(運転速度)を上げれば運転時間は縮まる?

ダイヤ作成担当者(いわゆるスジ屋さん)から聞いた話。

本社のエリート連中に、線路や信号機などの改良・改修がほぼ必要が無い範囲で最高速度をアップさせて、普通列車や優等列車の運転時間を短縮するように言われた。

速度を上げればとにかく運転時間が短くなると思っているらしく、それは無理だということを説明するのに苦労したと。

 

線路ってすべてが直線ではなく、曲線もあるし分岐器(ポイント)もある。

運転速度を上げたとしても、曲線や分岐器を改良しなければその手前での減速は当然必要になる。

直線部分だって速度が上がることで、レールをより丈夫なものに変える必要もあるでしょう。

例えば50kgレールを60kgレールに変えるとか、突き固めの回数を増加させるといった保守の面でも変更しなければいけない場面が増加する。

速度が上がれば制動保安距離も変わってくるので、ATSの設定も変更する必要が出てくる。

それまでの最高速度ならばATSによって止めることが可能だとしても、最高速度が上がることでATSがそのままの状態ではカバーができなくなる恐れが高まる。

となると最高速度を上げる区間のすべてのATSを設定しなおす必要が出てくる。

また信号機の視認距離と制動距離の問題も出てくる。

視認できる最遠の地点からブレーキを掛けて、信号機の現示に合わせた速度に調節ができなければ、最高速度の据え置き、または信号機を移設するか新しく設置するかが必要になる。

車両側もブレーキ装置の改良を行う必要が出てくることも考えられる。

実際のところ5km/hとか10km/h最高速度を上げるにしても、これらの作業が必要になってくる。

 

それで5km/hとか10km/h速度を上げてどれほどの効果があるかとなると、たいして変わらないことの方が多い。

優等列車で何駅か通過する場合は多少の効果は出るのですが、普通列車の場合はほぼ変わらない。

それまでより最高速度に到達する時間が要するようになるし、停車のためのブレーキ操作地点も当然それまでより遠くになる。

極端な話、90Km/hで走っていた区間を95km/hに上げたところで、普通列車だと運転時間はほとんど変わらないでしょう。

それなのに改修などにかかる費用は莫大なものになるから、費用対効果の面からもそう簡単に最高速度を上げることなんてできないのが本当のところです。

なので通常は設備の改修時期とリンクさせて、例えば3位式の閉塞信号機を4位式の閉塞信号機に変えるとか、ATSの抜本的変更、線路の付け替え、車両の更新などを数年から10数年かけて変えていく。

設備の更新に合わせて最高速度を上げていこうとなるのです。

 

もちろん会社の方針として最高速度を上げることで所要時間の短縮を行い、並行して走る他社線や自動車より優位に立つことを目標とすることもあるでしょう。

でもそんな余裕のある鉄道会社もないでしょうね。

西九州新幹線と佐世保線の特急に関する記事を読んで、昔ダイヤ作成担当者に聞いた話を思い出しました。

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