昔は行商人もよく乗車していたけど
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昔は行商人もよく乗車していたけど

今年(2020年)3月に近鉄で運行されていた行商専用列車である鮮魚列車が廃止され、今は一般の方も乗車できる列車に1両「伊勢志摩お魚図鑑」という鮮魚運搬専用の車両を連結しているそうですね。
私は行商専用列車は近鉄の鮮魚列車以外に知りませんでしたが、国鉄や他の私鉄でも運行されていたようですね。

行商専用列車の扱いは団体専用列車と似たものになるのかな。
定期手回り品切符と通勤定期券を所持していなければ乗車できないなど、一般の旅客は対象外にしているわけですから。

私が勤務していた会社で行商専用列車が運転されていたかどうかは知りませんが、行商人の方が平日の決まった列車に乗車していました。
たしか乗車位置も会社側から指定されていたと、車掌の頃に聞いた記憶があります。
魚を入れたトロ箱と呼ばれる木箱を何段にも重ねて台車に載せ、ロングシートとドアとの間の戸袋部分に置いて。
その横にはねじり鉢巻きのおじさんが乗車していました。

 

 

私が車掌になった頃には数人の行商人が乗車していましたが次第に人数が減っていき、私が運転士になってしばらくした頃には見かけなくなりました。
電車での輸送から車での輸送に変わったのか、はたまた行商人自体を辞めたのかは分かりませんが。

行商人が魚や野菜などを運ぶために電車を利用するには、通勤定期券と定期手回り品切符が無ければ乗車が許されていませんでした。
別に乗車券と普通手回り品切符でも良いと思うのですが、行商人の利用については制限を設けていました。

野菜ならば良いのですが、魚はかなり匂うのですよ。
トロ箱に魚と氷を入れているだけで、蓋などはなかったですから。
行商人がトロ箱と一緒に降車した後も、車内には魚の生臭いニオイが充満していました。
そのニオイについての苦情も、平成に入ったころからはかなり多くなっていたと聞いていましたし。

 

 

行商人が電車にトロ箱を重ねた台車を載せるときいつも
「おはよう!」
ってかけてくれるんですよ。
私自身が魚好きなこともあって
「今日はどんな魚がありますか?」
って尋ねることも多かったです。

目的の駅に着くと行商人の方はたくさんのトロ箱を載せた台車をホームに降ろし、降ろし終えたら車掌に向かって合図を送ってくるんです。
その合図を見てからドアを閉めて運転士に出発合図を送る。
出発監視をして行商人の前を通り過ぎるときには
「ありがとうね」
っていつも挨拶をしてくれました。

なにげに会社のHPで公開している営業規則を先ほど見たのですが、定期手回り品切符の項目が無くなっていました。
行商人が電車に乗ってくることは、私が勤務していた会社ではもう過去の話になっているってことなのでしょう。

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