年老いた車両
私が車掌をしていた30年以上前、その頃すでに古い車両だと言われながら本線を爆走していた編成がありました。
電気ブレーキが無く空気ブレーキのみだったこの系列は、運転士が少し突っ込んでブレーキをかけると、ブレーキシューと車輪の摩擦によって焼けたにおいが漂ってきました。
台車は古い金属ばねを使用したタイプで、実際のスピード以上の速度感を感じさせる揺れもすごかったです。
相性が悪かった車両
この編成と車掌だった私は相性が非常に悪く、夜間によく車内が真っ暗になっていました。
同僚に聞くとそのようなことはないというのですが、私が担当しているといきなり蛍光灯が消灯して、予備等だけになることが頻繁にありました。
最近の電車は予備灯といっても、蓄電池の直流電源で点灯可能な蛍光灯を積んでますから、まだ比較的明るいのです。
これに対して昔の電車の予備灯は本当に暗かった。
家の照明の常夜灯というオレンジ色のライトがありますが、昔の電車の予備灯もそんな感じで、オレンジ色にボワーっとうす暗く点灯する程度でした。
あまりに暗すぎて予備灯としての機能も果たしていませんでしたよ。
夜間に勝手に消灯する蛍光灯
夜の帰宅ラッシュの時にこの編成に当たり、ターミナル駅を出発して次の駅に着くまでの間に蛍光灯が消灯して予備灯が点灯。
一斉にお客さんがこちらを向きます。中にはギャーって悲鳴を上げた女性もいました。
でも私にはどうすることもできません。だって勝手に蛍光灯が消えたのですから。
暗くて電流計や電圧計も確認できませんし、できることといえば車内灯のスイッチのオンオフを繰り返すことだけ。
ちなみにオフにした瞬間に予備灯まで消えちゃうのです。
私が担当するときだけ勝手に消灯するのです
さすがにこの時は少し文句も言われましたし、苦情も駅の方であったそうです。
そして車掌だった私は簡単に事情を聞かれたのですが、勝手に消えたとしか言えませんよ。
車両課が点検したものの、やはりそのような兆候は出ません。
そして数日後にまたその編成に当たった私は、また夜間に真っ暗な電車を担当していたのでした。