人材確保のために取得年齢を引き下げ
12月26日に動力車操縦車免許の取得可能年齢の引き下げが報じられました。
地方の鉄道で深刻な状況となっている人材不足解消のための打開策として国交省で検討されており、早ければ24年度中にも実施されるといいます。
免許取得の年齢制限は「動力車操縦者運転免許に関する省令」によって定められており、現行は20歳以上となっているのですが、これを18歳に引き下げることで人材確保につなげたい意向のようです。
ちなみに現行の20歳の年齢制限は「情緒が安定した者の運転が保安上必要(日経)」とか「鉄道運行の安全性を高める(産経)」ために、それまでの18歳以上としていた年齢制限を1966年に引き上げられています。
産経の記事では、鉄道会社が沿線の高校へ就職するよう呼びかけた際に、列車の運転は20歳以上にならなければ免許が取得できないと説明すると、他業種へ流れることがあると国交省へ相談されることもあったようで、人材確保の観点から免許取得年齢の引き下げに動いたのかもしれません。
大手の私鉄の場合、駅勤務を1~2年以上経験後に登用試験で合格すれば車掌に、車掌を1~3年以上経験後に登用試験に合格し、見習を経て免許取得ができれば運転士になる流れが一般的。
早い会社で入社後2年、私がいた会社では最短で5年で運転士見習になれます。
この期間が長いから鉄道会社へは就職しないということなの??
鉄道会社入社後すぐに免許取得できる?
今回の免許取得可能年齢の引き下げには一定の制限も設けられるようで、日経によると駅員や車掌などの業務を一定期間経験する必要があるようですので、さすがに入社後すぐに運転士見習となって試験を受けて免許取得とはならないようです。
どの程度の期間を想定しているのかは分かりませんが、駅と車掌を半年ずつ経験したとして、その後運転士見習の期間を考えると動力車免許の取得は18歳では無理ですね。
私がいた会社の場合ですが、運転士見習の学科が4カ月ちょっとで実技も4カ月ちょっと、足すと約9カ月は必要ですから、早くても19歳から20歳になってすぐくらいでの免許取得になると思います。
実際のところ列車を運転するだけならば、高卒で入社してすぐ運転士見習に就き入社1年目で運転士になっても別に支障はないと思います。
あくまでただ列車を運転するだけならばですが。
私は駅2年、車掌4年で運転士見習になり、免許を取得した時は25歳でした。
でも運転士になってから思ったのは、車両課など検修部門で車両のことを勉強してから運転士になるほうが良いのではないかと。
国鉄(JRに変わって間もない頃も)は検修部門を経て運転士になる人が多かったように記憶しています。(今も??)
長年運転しておれば担当している列車が故障を起こしたり、事故に遭うことも当然あるわけで、そのような時に運転士見習で習ったことだけでは不足だなと私は感じました。
車両のことを機器類まで熟知しているのと、説明を受けて習った程度ではやっぱり違いますから。
他社の運転士経験者の方と話をすると、いかに私が知識を持ち合わせていないのかが露呈する場面が多く、運転士だけど運転以外の部分をいかに持ち合わせておくことが必要か、よく思い知らされますから。
※運転士の時に勉強する気が無かったことがもっとも大きいのですが…
でも駅や車掌を経験したから運転士になってから役に立つ部分もかなり大きいですし、いろいろと経験してから運転士になる方が良いと思うのです。
人材不足の原因って?
ローカル線だけではなく都市部の鉄道でも、(一部時間帯のみを含む)駅の無人化や列車のワンマン化を加速させています。
利用者の減少傾向もあって、経費の縮小のために人員を減らしているわけです。
それだけではなく、乗務員ならば一勤務での乗務時間・距離がどんどん長くなっていますし、駅の場合は昔は一つの駅に二人の駅員が勤務していたところを一人にして、休憩時間を確保するための駅員が順に巡回するとか、巡回の駅員がいる時だけ有人となって他の時間帯は無人とするケースも多くなっています。
それに駅も乗務員も泊まり勤務が基本となっていますし(もちろん日勤勤務もあります)、世間が休みであろうが関係なしに勤務があります。
駅勤務の時も乗務員になってからも、勤務中に年越しを迎えるんてこともごく普通のこと。
それこそ乗務前に乗務区にいる同僚に「良いお年を」とあいさつして乗務し、乗務を終えて戻ってきたら「あけましておめでとうございます」とあいさつすることも何度も経験しました。
賃金に関して言えば、昔は今とは比べ物にならないくらいに仕事が軽かったのに賃金はかなり良かった。
でも今は仕事はかなりきつくなっているのに、賃金はそのままどころか下がっています。
私が30歳当時にもらっていた給与と今の30歳の運転士がもらっている給与では、冗談抜きで雲泥の差があります。
昔は大卒で名の通った一流企業勤務の同級生より、私の方がはるかにたくさんもらっていましたから。
※遠い昔は本当に勝ち組と言われていたのに……。
ロカール私鉄などでは動力車免許を持った人を中途採用する動きもありますが、あまり芳しくはないようです。
異口同音にその給与では応募する気にはなれない、という意見が最も多いようです。
勤務の内容が昔よりきついのは仕方がない面もありますが、それに対する給与が低すぎて人が集まらないということですね。
目先の年齢引き下げだけでどれだけ人が集まるのかは未知数ですが、ただ言えることは、責任の大きさの割に給与が他の職種と変わらないのであれば人は集まらないということ。
バス路線の休止や減便を見ても同じことが言えるのですが、経営サイドはもう少し問題を直視する必要があると思いますが。
ちなみに
私が入社する以前のことなのでかなり昔のことですが、車掌も運転士も足りなくて、通常駅勤務を2年経過後に受けられる車掌登用試験を1年に短縮し、さらに年に2回も試験を実施。
車掌経験も3年必要なところを1年に短縮して運転士登用試験を受けられるように変更。
登用試験自体も受ければ合格という状態で、車掌と運転士を激増させたことがあります。
※無理やり運転士登用試験を受けさされ、仕方がなく名前だけ書いてあとは白紙で出したのに合格したという方が何人も…。
この時期に乗務員になった人は大きなミスも多く、平気で異線進入するわ、駅以外の場所で平気でドアを開けるわで、一人で担当するようになってからのカバーが相当大変だったと聞きます。
乱造乗務員はあとあと会社にとってマイナスになることもあります。