私は大阪市内の起点駅で出発時間になるのを乗務員室で待っていました。
私が担当する列車の2分前に優等列車が定刻に出発していきました。
その優等列車がポイントをいくつか通過していくと、線路上にたくさんいた駅の係員たちが一斉にホームに上がってきます。
それと同時に
「〇〇駅ではポイント手回し転換訓練を行っており駅扱いとなっていましたが、ただいまセンター扱いに復帰しました」
ポイント手回し転換訓練は、ポイントが自動で転換しなくなった場合に、ポイントマシンにハンドルを取り付けて回すことでポイントの方向を変えるものです。
そこそこ重たいハンドルを21回転させてポイントの向きを変えます。
通常各駅のポイントは集中制御装置で管理されているのですが、この手の訓練の時は制御装置と切り離して、ポイントの転換が完了したとの通知を受けた駅の信号所が信号機の現示を行います。
訓練が終われば元の集中制御装置による管理に戻すのですが、運転指令は集中制御装置による信号扱いのことをセンター扱いとかCTC扱いと人によってバラバラなのですが、とにかく駅扱いから元に戻ったことを通告します。
ポイント手回し転換訓練のことはこれまでに何度か書いていますが、とにかく列車の発着が遅れるのです。
この時も駅への到着が3分近く遅れて、かなりカリカリしていたんです。
出発の時には訓練も終わって遅れずに済みそう。
実際に優等列車も定刻で発車していきましたし、乗務員室の中で出発信号機が進行を指示する信号現示をするのを待っていました。
信号機を見ていても一向にY(黄)やG(青)現示にはならずR(赤)のまま。
運転時計とスタフを見比べるとすでに1分以上遅れている。
でも訓練は終わり線路上に係員は誰一人いない。
運転指令も駅扱いから通常の集中制御装置によって信号を現示する方式に復帰したと言っているし。
カリカリしていた私ですが
「バカらしくて文句を言う気にもならん・・・」
いつもならば運転指令に列車無線で怒鳴りつけてやろうと思うのですが、何もせずジーっとしていました。
出発時刻を3分ほど回っているけど運転指令は何も言ってこない。
そろそろ出発しないと次の列車がこの駅に到着できないし、仕方がなく
「〇〇駅停車中の〇〇列車ですが、出発時刻を3分以上経過しいますがまだ信号現示しません」
しばらく間が空いてから運転指令は
「しばらくお待ちください」
いやいやもう十分待っているぞ。
すると先ほど引き上げていった駅の係員たちが、走ってまた軌道内へ入っていきます。
そこから数分待った頃にようやく信号現示。
到着する列車もかなり遅れていたようです。
この起点駅から3駅ほど進んだ頃に再び
「〇〇駅ではポイント手回し転換訓練を行っており駅扱いとなっていましたが、ただいまセンター扱いに復帰しました」
との無線が入りました。
いったい何があったんだ??
乗務区に戻ると助役が数人私のもとへ走ってきて
「すいません!ミスが重なりました!」
訓練が終了したことと、〇時〇分に駅扱いを終えて集中制御装置による信号扱いに復帰させることを運転指令に伝える。
運転指令はこの報告をもとに列車無線で駅扱いの終了を一斉告知。
ところが駅の信号所は駅扱いの状態のまま放置しちゃった。
さらに運転指令側も操作パネルで駅扱いから集中制御装置による扱いに戻ったことを確認し忘れた。
駅も運転指令も通常の取り扱いに戻ったことを一切確認しなかったわけです。
元々手回し訓練は時間がかかり列車の遅れが発生しがちなのですが、私は定期列車が遅れるような訓練をするべきじゃないし、通常ダイヤの時間帯に訓練を行うならば遅れさせないように手順を見直せと、会社の上の方の人たちにずっと言っていたんですよ。
手順を変更できないのならば、深夜や早朝など運転本数が少ない時間帯に訓練をしろとも言ってきたし。
手順は変えられない
暗い時間帯の訓練は危ないからできない
今でも遅れることが分かりながら、そしてお客さんに訓練のために遅れるかもしれないといった告知もなく、訓練だから仕方がないといった態度で手回し訓練をしているのだろうか。。。