このブログや書籍では分かりやすいように、〝指導運転士〟とか〝指導車掌〟という表記をしてきました。
私が在籍していた会社では実際にはこのような呼ばれ方はしておらず、ただ単に〝指導員〟と呼ぶか、〝師匠〟と呼ぶことが普通でした。
旧国鉄では教導と呼んでいたようですが、今でもその呼び名は残っているのでしょうか。
指導運転士という役職は旧国鉄では見習を教えるどころか、現役の運転士の操業を指導監督する役目を担っていて、おそらく私がいた会社の助役に相当する仕事をしていたのでしょう。
今のJRではどのようになっているのかは知りませんが、今でも似たような感じになっているのかな?
なので指導運転士とか指導車掌という役職は、私がいた会社では実在しません。
車掌の見習を指導する立場の車掌の指導員は、乗務区の助役以上の者が集まる定例の会議の中で、誰を新しい指導員にするかが話し合われます。
そして会議出席者から特に異論が出なければ、車掌の指導員に指定するということになります。
特に基準があるようでないような感じで、10年以上の経験がなければ絶対に指定しないと言った時期もあったし、3年程度ですぐに指定することもあるなど、その時の乗務区長の腹一つといった感じでした。
車掌の指導員に指定されたからと言って給料が上がるとか、職格が上がるということもなく、ただ社内で指定されるだけのものでした。
車掌の指導員に指定されると、2~3日ほど教習所へ行って教習の進め方や報告書の書き方などを勉強しますが、特に難しいということはありません。
ある程度の年数を経験しないと指定されなかったころは、それこそ一度指導員になると偉そうにしている人も多かった。
私が車掌の見習の時に当たった指導員がまさしくこのような人でした。
運転士の指導員についても同じようなプロセスで選ばれますが、社内でただ指定されるだけではなく、運輸省(現 国交省)に届け出て指導操縦者として登録されます。
指導操縦者として登録できる運転士の経験年数も規定があるとは思いますが、詳しくは知りません。
ただ私がいた会社では、運転士の経験が7年以上ないと運転士の指導員には指定しないという決まりが存在していました。
車掌と同じように教習所へも4~5日は通いますし、営業車を使って指導の訓練も行いました。
新しく指定された指導員2人で乗り込み、一人が見習役でもう一人が指導員役。
指導員役が指示した通りに見習役が操縦するのですが、指導員役はいつもの自分が操縦する感覚で指示を出すわけですが、それを聞いてから指示されたとおりにブレーキハンドルを操縦すると、どうしても遅いのです。
指示通りに操縦していると過走しそうになるのが見習役は分かるので、つい指示される前にブレーキハンドルを動かしてしまう。
それによってどういうタイミングで指示を出すべきなのかを学んでいくわけです。
ちなみに、指導操縦者として登録されたからといって何かが変わるものではありませんでした。
給料が上がるわけでもなく、職格が上がるわけでもなく。
ただ運転士の指導員の資格を有していると言われるだけです。
私は車掌の指導員はしていませんのでよく分からないのですが、運転士の指導員として見習を就けると手当が出ていました。
当時(2000年ごろ)は1日あたり150円。
この額からも分かるように、運転士の指導員もそれほど値打ちのあるものではなかったです。
車掌や運転士の指導員って師匠とは呼ばれますが、先生って感じではありません。
どちらかというとコーチという感じでしょうか。
教えるというよりは的確にアドバイスを送るというイメージに近いと思います。
※車掌見習の時にはアドバイスなんて……
ちなみに〝先生〟は教習所の職員を指します。
学校と同じような時間割があって、車両を担当する職員は誰で、運転法規を担当する職員は誰という感じで教科担任が決まっていたし、クラス担任に相当する職員も決まっていましたから。
教習所の職員から現場へ助役や首席助役として戻ってきても、ずっと〝先生〟と呼ばれていました。