ある程度の大きさであればレール上の物体を確認できるけど
電車を運転していればいろいろな異音に遭遇します。
レール上に小さな木の枝の落ちていたとしても、踏んだ瞬間に“キン!”って感じで甲高い音が響いてきます。
強風のあとなんて頻繁にこの手の異音を聞きます。
運転していれば当然ですが前は見ています。
でもレール上の小さな物体なんてさすがに事前に発見することは難しい。
発見できるとすれば、レールの踏面(車輪が乗っている部分で銀色に光っているところ)が完全に隠れるもので、高さもそこそこ大きいものくらいでしょう。
ずっと先までレールは銀色に光って見えるわけですが、その銀色の光が途切れていて明らかに大きなものが乗っていると確認して
“レールに何か乗っているんじゃない?”
と分かるものです。
なのでレール上にバラスト(砕石)が乗せられていても直前でないと確認できませんから、確認してから非常ブレーキを入れたところでまず間に合いません。
異音だけでは止めなかったけど
どの程度の音を確認すると異音があったと列車無線で報告し、列車を止めて点検するのだろうかと最近思います。
新幹線の台車に亀裂が入り大事故の一歩手前だった件以降、異音による緊急停止と点検、それに伴う列車の遅れのネットニュースをよく見ます。
でも私自身は異音を感知したからといって運転指令に列車無線で報告したことは一度もないし、異音による緊急停止もなければ点検を行ったこともありません。
25年以上も運転士をしていたのですけどね。
でも
たまにあまり経験したことがない異音を聞くことがあるんです。
さすがにそんな時は、すれ違った列車(離合列車)や続行の列車の運転士が異変に気付けば無線を入れるだろうと、列車無線のボリュームを上げたりはしていましたけどね。
※これ多くの運転士がやっていました。。。
もちろん異音を確認して運転指令に無線報告する運転士は昔からいましたし、この扱いが普通だと思います。
でも電車を止めて確認する人はいなかった印象があります。
運転指令が後続の運転士に対して、異音があったとする現場を徐行で走行して状況を知らせろ、という取扱でした。
そして異音について無線を入れた運転士は帰区してからチクチクと助役たちから質問攻め(なぜその程度で無線を入れたのだ、みたいな……)
それがイヤで無線を入れなかった運転士も多かったのかもしれません。
私がそうでしたから……
異音とともに衝撃を感知すれば
異音だけでは列車を緊急に止めることはなかったけど、音と共に衝撃などが伝わってくれば非常ブレーキを入れて止めることが多かったです。
置き石なんて音よりも車両に響いてくる振動や、石によって車両が浮き上がってレールに叩きつけられるような衝撃が大きかったですから。
犬や猫と衝突した時も音や振動が伝わってきますが、車両と当たった瞬間を見ていますから列車を止めることはなかったですね。
朝のラッシュ時間帯に犬や猫との接触で石が飛んでいき、沿線のスレート壁の倉庫に穴が開いたことがありました。
会社側は軽くブレーキをかけて石が飛ばないようにと指導してきましたが、運転士側が猛反発。
「朝の超満員の電車でいつもとは違う場所でのブレーキなんてかけられない!」
「人より犬や猫を優先しろというのか!」
こういう経緯から、私が所属していた乗務区では犬や猫との接触時にはブレーキをかけない扱いとなっていました。今は違うと思いますが…。
ハトや鷺といった鳥類と衝突することも比較的多かったです。
鳥類は飛行中に衝突するから当然当たる瞬間を見ているし、ガラス面に当たれば“ドン!”っていう音と振動が、車両の下部に当たれば音よりも振動だけが伝わってきます。
何と衝突したのかが分かっておれば列車を止める止めないの判断はしやすいです。
何が原因の異音かが分からず振動も伝わってくれば、それはやはり停止すべきです。
もちろんイノシシやクマ、シカと言った大型の動物と接触すれば停止させます。
ブレーキ系統が故障していたらシャレになりませんから。