トラックが落ちた?
私が車掌になってすぐのころ、レールの一部が破損して信号電流が流れなくなり、信号機がR(赤)のままになるという事象が乗務中におきました。
その時列車無線では
「××駅から○○駅上り線、第2閉塞信号機がトラック落ちにより……」
と流れてくるのを聞きました。
「そういえば○○駅の付近は切通しになってるから、フェンスを突き破ってトラックが軌道内へ落ちてきたんだな」
本当にそう思って私は車内に、
「○○駅付近でトラックが軌道内へ落下し、この先のダイヤが乱れています」
みたいな放送をしたことがあります。
本当にそう信じ切って真顔で放送したのですが、運転士からインターホンで
「ホントにトラックが落ちたんじゃないぞ」
と笑われながら指摘されたことがあります。
軌道回路の短絡
レールには信号や踏切の制御のために低電圧の微弱な電流を流しています。
基本的には信号機から信号機までを一つの閉塞区間(トラック)としていて、列車がその区間にいない時は信号機などにまで電流が流れることで、その閉塞区間内に列車がいないという条件が成立します。
閉塞区間内に列車が走ると、車輪と車軸によってその電流をショートカットさせることで信号機まで電流が到達せず、その閉塞区間の始端に建つ信号機はR(赤)となります。
線路が欠けたりヒビが入るなどすると信号用の電流が信号などに到達せず、列車がいないのにいる状態つまりR(赤)になるのですが、この現象を起動回路の短絡と言い、私がいた会社ではトラック落ちと呼んでいました。
運転士になるころには、私がいた会社ではあまりトラック落ちという言い方はしなくなった気がします。
私の車内への放送がきっかけだたとは思いませんが(笑)
レールが欠損して信号電流が流れなく
線路にひびが入ったり欠けたりするのは外部的な要因、例えば踏切内のレールが自動車車両の通過に耐えられなくなって破損というケースは少ないように思います。
だって自動車より鉄道車両のほうがはるかに重いですし、かなりの高速で通過しているからレールへの負担はどう考えても鉄道のほうが大。
よく聞いた話では、レールの劣化(金属疲労)によるもののほか、気温差によって折れたりヒビが入ることが多かったように思います。
レールの折損などによって軌道回路がショートすることで信号機がR(赤)なった場合、その信号機の外方で停止します。
そして運転指令に許可を得て15㎞/h以下で当該信号機の内方へ進行します。
閉塞区間を超えるまでは15㎞/h以下で走行し、次の信号機を踏み込んでから通常の走行を行う。
こんな取り扱いになるので、たちまちダイヤが乱れまくるわけです。