私が車掌の時の話です。
その日は支線を担当していました。
乗組みの運転士は気心知れた仲の良い人でしたし、支線の終点の駅に勤務していたのは駅勤務時代にお世話になった方で、その時は首席助役に出世していたような記憶があります。
また朝ラッシュが終わってから夕ラッシュが始まるまでの時間帯の勤務でだったし、ホントにのんびりと仕事をしていました。
この支線の乗務員休憩所は本線との接続駅ではなく終点の駅に設けられており、首席助役からコーヒーやおやつをご馳走になるなど、本線で乗務しているときとは全く違った雰囲気が漂っていました。
翌日出勤したときに
「昨日〇〇仕業やったやろ?△駅の□首席が電話してほしいと言われてるんやけど」
そう言われたのですぐ鉄道電話(社内電話)をかけました。
私:「昨日はいろいろとありがとうございました」
首:「こうすけが退勤してからなんやけど、夜に1時間近く客に文句を言われてなぁ・・・」
私:「何かあったんですか?」
首:「こうすけが担当していた列車なんやけど、その列車に乗れなかったとものすごく文句を言われたんや」
私:「は?」
首:「その客曰く、早く発車したのと違うかと言ってきてるんや」
私:「早くといわれても出発指示合図に従ってドアを閉めたし、時間もぴったりやったけど」
首:「そうやろう、キチンとした回答を出さないのならば本社へ苦情を言う!てえらい剣幕やってな・・・」
私:「良いのじゃないですか?本社へ文句を言えば。別に悪いことはしていないし」
首:「その客があと30分ほどしたらまた駅に来るんやって。じゃあ適当にあしらうで」
私:「はい、すいませんがお願いします」
駅の首席助役は、列車集中制御装置で管理しているため早発はできないと説明したのですが納得せず、結局後日本社へ文書で苦情を申し入れたそうです。
一週間ほどしたころ、私から事情を聴いて回答しろと乗務区宛にお達しがあったそう。
仕事の手順を説明して、ついでに運転指令に残っているデータを見れば?と回答した私。
そのデータから早発はしていないことが分りました。
その客はそれでも納得がいかなかったらしいのですが、その後の本社とのやり取りの中で分ったことがありました。
実は券売機で切符を買っている間に電車が出発してしまった、つまりはただの乗り遅れだったそうなのです。
その電車に乗らないと予定していた飛行機に搭乗できなかったらしくて怒っていたそうなのです。
※普通の人間の感覚ならば、余裕をもって空港へ向かうはずなのですが・・・
何でもかんでも乗務員や駅係員のせいにすればいいと思っているのでしょうね。
こんな人が30年以上前にはすでにいたんですよ。