最初に謝っておきます。
今現在運転士として職務に励まれている方にケンカを売っているわけではありません。
オレは運転がうまく、お前たちはへたくそ! なんて気持ちもありません。
運転士個人の力量以上に、鉄事事業者の上層部の考え方が変わってしまったことがもっと大きな原因です。
車両の性能は上がっているはずなのに…
このところ用事で電車に乗る機会が多くなっているのですが、どうにも乗り心地が悪いと感じることが多くなってます。
私が勤務していた会社もそうだし、他の私鉄でもそう。
昔の運転士はここまで酷い運転はしなかったのになって、正直言って質の低下が感じられるのですよね。
逆に昔は雑な運転士が多いと感じた国鉄(現JR)ですが、京阪神地区の電車に乗ったかぎりでの感想からいえばかなりマシになっています。
車両の性能差が根底にあるのかもしれませんが、それにしても関西私鉄の運転士は大丈夫か?って思ってしまいます。
今はJRも関西私鉄も大半の車両のブレーキは電気指令式で電磁直通ブレーキ(HSC)はかなり少なくなっていると思います。
電気指令式の良いところは応答性が早く、ブレーキの段数(ノッチ、ステップ)に応じたブレーキ力が確実に得られるところです。
それに対してHSCは通常のブレーキの場合、ブレーキハンドルを操作してブレーキ力を得るまでに3秒ほどかかり応答性は悪い。
またブレーキハンドルの角度に応じてブレーキ力が決まるわけですが、微妙な角度の違いによってブレーキ力は当然変わってきます。
HSCの場合は圧力計(直通管圧力・SAP)の確認も必要ですが、電気指令式だと任意の段数に入れれば良いのでそれも楽な点ですね。
でも電気指令式のそのよい点に甘えきっている運転士が多いのだろう、だからこんなにも乗り心地が悪いのだろうと私は思います。
電気指令式ブレーキは楽でいいんだけど…
客室から停車駅に進入した列車の減速具合を見ていると、明らかに制動力が強すぎることが多いです。
過走防止用のATSなどもあるので仕方がない面はありますが、ブレーキをかけ始める地点が遠すぎる。
おそらくですが、ホームの真ん中あたりで失速を感じた運転士はブレーキを1~2段ほど緩めるのでしょうね。
すると今度は停止位置が近づいた時にブレーキを緩めすぎたことに気付き、慌ててブレーキを追加する。
このブレーキを追加したときに車内のお客さんは倒れないようにと踏ん張る必要が出てくる、つまり乗り心地が悪くなるわけです。
電気指令式というブレーキは先にも書きましたが応答性が非常に良い。
なのでブレーキを緩めたり追加したりを繰り返したとしても、停止位置にきちんと止めることは比較的容易です。
でも電気指令式より以前のブレーキは、たとえばブレーキ少し緩めようとハンドル操作をしたとしてもやっぱり応答性が悪いので
“あれ?まだブレーキが効きすぎている”
と勘違いしてさらにブレーキを緩めれば今度は
“全然制動力が足りない!”
って慌ててブレーキを追加する。
でも応答性が悪いのでブレーキを追加しすぎて、ドスン!って止まってしまうことに。
運転している車両の勢い(惰力)を五感で感じ取ることができていない。
それと一段制動階段緩め、別に二段制動でもいいし緩めるのは二段緩めや三段緩めでもいいけど、追加制動をせずに停止位置へ持って行くことが出来るブレーキ操作を習得できていない。
この二点に集約できるわけです。
どんな運転をしようが停止位置に止まればそれでいい
ここからは私が在籍していた会社での話になりますが…。
私が運転士の見習だったころは、多少の過走(オーバーラン)はかまわない。
それは車両の勢い(惰力)を覚えるためで、これ以上の勢いがあれば止まらないということを身につけさせるためでした。
でも会社側の考えがどんどん変わってきていて、見習であろうと過走はぜったいにダメでとにかく停止位置へ止めろとなっていきました。
こうなると運転士の見習に教える指導員(師匠)の中には
「この駅に止めるときは、あそこの道路標識からブレーキをかけろ」
みたいな教え方をする人が増えていきました。
遅れていようが余裕があるときであろうが、速度は常に一定でブレーキをかける位置も一定…。
そして会社側も
“一段制動階段緩めなんて固執しなくても良い!”
こういった影響から今のような運転士が増殖したのかなって思います。
私が運転士だったころからATSによる制限がかなり増えましたが、それでも速度計なんてカバンで隠して速度と惰力を感じ、一段制動階段緩めで定時で運転する“訓練”を私は定期的にしていました。
会社側にすると私のような運転士はどうでもよく、とにかく停止位置に止めることができれば運転士はそれでいい、そんな考えになっていましたから。
自動運転のほうがはるかにマシ
なんてことを言われないようにするために、もう少し技術を磨いてほしいなあと願っています。