パンタグラフとは電車の屋根上に付いている、電気を取り込むための装置です。
地下鉄などでは走行用のレールの横に給電用のレールを敷設して、台車に取り付けられた集電靴から集電する方式もあります。
パンタグラフとはこんな装置です。
電車の屋根の上にこのような装置が付いているのを見たことがある方も多いと思います。
昔は上の画像のように菱形のものが一般的だったのですが、最近では下の画像のような1本のアームで構成されているタイプが多くなっていて、シングルアーム(パンタグラフ)と呼ばれています。
このシングルアームを私が勤務していた会社で初めて導入するとき、乗務員の研修会の場で車両課の方が胸を張って言っていたのです。
「頼りなさそうに見えますが、シングルアームは従来のパンタグラフと同等以上の強度を持っています」
シングルアームは走行の向きによっても強度が違うのではないか?というのも多くの乗務員が最初に抱いた疑問点です。
→(左から右)へ列車が進行する時、シングルアームが「>」の向きの時はある程度強度がありそうだけど、
←(右から左)へ列車が進行する時、シングルアームが「>」の向きだと弱そうという率直な感想を皆が持ったのです。
この疑問に対する返答も
「問題ありません」
ある時、私の後続列車はA駅の手前で屋根上で異音を感知したので、停止後に無線で連絡後駅の係員などとホーム上から屋根上を見たのですが、異常は発見できませんでした。
私は交代の駅に無事到着し勤務終了となったので、何だかいやな予感がするしそそくさと帰宅しました。
※ここから翌日に聞いた話です
後続列車はそのまま運転を継続したのですが、数駅進んだところでホームにいた旅客からパンタグラフが変形していると駅へ連絡があり、さらに数駅進んだところで点検するとパンタグラフ2基が変形し故障しているので、電車線を停電させて運転士が屋根上に登ってパンタグラフをロープで結ぶ(緊締)処置をしました。
私の2本後の列車は異常なかったのですが、3本後の列車のパンタグラフが複数変形していると。
最初に報告のあった異音を感知した駅の手前を点検すると、金具(曲線引装置・曲引)が外れているという架線の故障が発生。
パングラフがこの金具に接触して壊れてしまったようです。
ちなみに後続列車と3本後は「シングルアーム」、私と2本後は「菱形」のパンタグラフを搭載したやや古い車両でした。
車両課が点検したところ、私が担当していた車両と1本前を走行していた車両、さらに2本後を走行していた車両のパンタグラフにも傷が入っていたものの、走行に支障が出るようなものではなかったとのこと。
この3本は「菱形」パンタグラフを搭載。
なので架線が故障したのは報告があったよりもう少し前だと思うが、「菱形」パンタグラフのおかげで無事に走行できた。
これに対して「シングルアーム」パンタグラフは残念ながら強度的に「菱形」より劣っており、架線の金具が接触したとことで破壊されたのだろうとのことでした。
通常走行の場合は「シングルアーム」でも問題はないらしいのですが(風圧や架線との接触による摩擦)、別の要因が加わると「菱形」ほど強固ではないのでしょうね。