時間が迫っているときに踏切が閉まっているとイライラしますよね。
中には時間のは関係なく、踏切が閉まって待たされることが許せない風な人もいるようですし。
いかにも時間が無くてイライラしているスーツを着た男性が、左右を見渡してから遮断桿を押して踏切内に入り渡っていく様子。
少しだけ遮断桿を押して体を横向けにして触れないようにして、小走りで踏切を駆け抜けていく会社勤めっぽい女性。
女子高校生の中には降下した遮断桿を思いっきり押し上げて、気だるそうに渡っていく様子なんかもよく見かけました。
無理に踏切を横断する働いている人たちは、時間が迫っていて踏切で止められるのが困るという人がほとんどですが、遮断桿を持ち上げて渡っていく女子高生は、踏切で待つのがイヤというだけって感じに見えました。
まぁどちらにしても気持ちは分かるのですけど、万が一ってことがありますからね。
運転士をしていてホントに怖かった無謀な踏切横断のひとつに、歩行者ではなくオートバイでの横断がありました。
私は朝ラッシュ時間帯の優等列車を担当していて、100Km/h以上で走行していた時です。
踏切にほぼ直角に交わる道路を、踏切で待っている自動車数台を追い越して線路へ接近してくるオートバイが見えました。
すごいスピードだけどこれって止まれるの?と思いながら見ていた私は、無意識に何ステップかのブレーキを入れていました。
するとそのオートバイは車体を倒して(転倒したのかな?)遮断桿の下を滑るように通過して踏切内へ侵入。
マジでぶつかると思って非常ブレーキを入れたのですが、なんとそのオートバイは横倒しのまま踏切を通過していき、道路上で態勢を立て直してそのまま走り去っていったのです。
ちょうど反対方向からも優等列車が走行してきていて、当然ながらそちらの列車も非常ブレーキで停車です。
自分自身ではどのような顔をしていたのかは分かりませんが、離合列車の運転士は明らかに顔が引きつっていました。
呆気にとられた私は列車無線を入れることも忘れて運転を再開。
この時離合列車も列車無線を入れていなかったので、このオートバイによる無謀な横断は誰も知らないまま。
乗務区に戻ると離合列車の運転士が私の元へきて
「オートバイ渡っていったよな?
あのオートバイ滑ってなかった?
確認しようと思ってキョロキョロしたけど影も形もなかったよな
マジで幻でも見たのかなって思って、無線を入れることもできんかったわ」
そして
「お前電車を止めんかったのか?」
もちろん非常ブレーキを入れたけど、ものの見事にオートバイを横倒しにして踏切を通過していき、踏切から出たところで態勢を戻して走り去ったことを説明。
「まじで?」
その様子をすべて見ていた私もビックリだったけど、一部分しか見えなかった離合列車の運転士はもっと驚いたのかもしれません。
オートバイやスクーターを横倒しにして遮断桿をくぐり、あとはオートバイを押して踏切を渡っていく人は何度も見たことがあります。
でも乗車したままオートバイを横倒しにして滑っていくように踏切を横断していく人は、この一度しか見たことがありません。