11月28日JR西日本・奈良線。
12月14日JR九州・長崎本線。
それぞれ赤信号を無視する事故が発生したようです。
奈良線の事案は急病人発生のために新田駅付近に停車していた快速列車がいたため、駅手前の閉塞信号機は赤だったにもかかわらずそのまま冒進し、快速列車に気付いてブレーキを掛けて停車させた。
長崎本線の事象はネットニュースでのタイトルが「【長崎】JR列車 遮断機降りてない踏切を通過」となっていたので、踏切の故障で遮断桿が下りていないのに通過したのかと思っていたら、出発信号機が赤だったにもかかわらず列車を出発させて、ホームと出発信号機の間にある閉まっていない踏切を通過したという件のようです。
閉塞信号機と出発信号機の違いはありますが、どちらとも運転士が赤信号の現示を無視して運転したことに違いはありません。
ATSに関しては会社によって相当仕様に違いがあり、私が勤務していた会社のATSとJRの路線の中でも国鉄時代から広く使われているタイプのATSとでは全く動作などが違いますので、私は詳しくは知りません。というか、私は他社のATSに興味がないので……
私が勤務していた会社でも5キロ以下ならば赤信号を通過できます。
完全に停止してからR現示の閉塞信号機を超えるには確認操作が必要ですが、5キロ以下で止まらず転がしている状態だとそのまま超えていけるのです。
長崎本線のケースを私の会社のATSに当てはめると、前方の出発信号機がR現示の場合は駅に停車した時点で起動することはできませんが、確認操作を行えば起動させられます。
ということで、私の会社でも起こり得る事故ではあります。
こういう事故が起きると保安システムを見直すべきという、至極当たり前な意見が出てきます。
赤信号を超えて運転できないというシステムの方が絶対安全ですからね。
ただ事故や故障などのことを考えて、一時的にATSを解除できる装置は必要ですけど。
そうしないと一つの信号機が故障した場合でも、その信号機を復旧させるまで何があっても動かせなくなりますからね(もちろんこの方が安全だけどそうもいかないし)
大手私鉄やJRでも都心部を中心にシステムの改良はどんどん進んでいるとは思いますが、地方路線はどうしても後回しになって旧態依然としたATS(もちろん改良はしていると思いますけど)を使い続けていますが、旅客数と収支を見たうえで設置していくでしょうからそれも仕方がない面もあるのかな。
もちろん安全面を最優先にして国費を投入してでも改良していってほしいですけど、まず無理な話ですし。
でもどんどんシステムが改良されて安全面が強化されていくことに反比例して、人間の注意力がどんどん低下している気もします。
具体的な数字は持ち合わせてはいませんが、停車駅なのに通過しそうになる誤通過を防止するATSが導入されて、誤通過も過走(オーバーラン)も激減したとしても、今度は逆に通過駅なのに停車してしまう誤停車が増加しているように感じます。
私が勤務していた会社での話なので全国の鉄道に当てはまるのかは分かりませんが、これまで過走や誤通過しないように緊張して運転していたものが、新しいシステム導入によって緊張感が緩んで注意力が低下し、誤停車が増加している、そんな気もするのです。
指差喚呼だって関西の私鉄ではあまり実施していなかったけど、ここ10年くらいで取り入れる会社が出てきました。
導入当初は新しい手順が加わったことで良い緊張感が生まれミスも減っていたようですが、数年経つと慣れてしまうことや、昔より作業が多いことで他の手順まで簡略してしまうということが起きて、結果的にはミスの発生頻度は逆戻りしているということもあります(某私鉄勤務の友人に聞いた話です)
私が運転士をしていたころはまだ機械的に新しいシステムなんて導入されていませんでしたが、それでも確認作業にいろいろな手順を加えて事故防止を図ろうとはしていましたが、1~2年もすれば新しい手順も効果が消えていき、さらにそこに新しい手順を加えて事故防止を図ろうと躍起になり、結果としてそんなに確認事項ばかり増やしてそちらに神経が行ってしまい、肝心な動作面に影響がでるのでは?なんて言われていたほどですから。
いっそうのことATSなどの保安装置をすべて解除して1日運転してみれば、どこを特に気を付けるべきかが分かっていいんじゃないかという声も出たほどです。
いまJRで運転している人たちのほとんどは、JR化以降に入社してきた人たちだと思います。
入社以降いろいろな新しい制約が積み重なって、一つの作業を行うにも昔の数倍の労力が必要になっているのではないかな。
私が勤務していた私鉄でも同じような状態だけど、国鉄からJRへの変革では私鉄の数倍は変わっているでしょうから、現場で働く人のプレッシャーは旧国鉄時代とは比較できないほど大変じゃないかな。
赤信号なのに見落とすとか、出発信号機を確認し忘れたとか。
さすがに運転士をしていた者からすると、ちょっと考えられない出来事が連発ですからかなり心配です。