昨年は福岡県で、そして今年は静岡県で幼稚園バスに園児が残されたままとなって熱中症死した事件がありました。
夏の締め切った車内に、それもエンジンが切られた状態で取り残されるという痛ましい事件は、まだ記憶に新しいところです。
バスと言ってもハイエースクラスの車両ですから、運転手が数歩車内に歩み寄れば全体が見渡せるのにと思いながらこの事件のニュースを見ていましたが、鉄道の場合でも入庫させた車内に取り残された乗客がいることはあります。
基本的に車内の乗客への対応はすべて車掌の仕事なので、6両編成だろうが8両編成だろうが12両編成だろうが、旅客の降車を確認するのは車掌の仕事です。
極端な言い方をすると、12両編成の先頭車両で熟睡中の旅客を起こしに行くのも、本来は最後尾の車両に乗務する車掌の仕事です。
ただ入庫の時間が遅くなるのを嫌って運転士が仕方がなく起こすのを手伝うのですが、だんだんと運転士が手伝っているという概念が無くなった車掌が増えてきて、例えば6両編成の入庫の時に車掌の方から
「後3両は僕が見ます」
って言ってくる車掌が出てくる状態に。
「乗客を降ろすのは車掌の仕事。本来運転士は仕方がなく手伝ってあげているだけ」
と言ったことを教えても、ポカーンとしたままの車掌も多かったが。(私がいた乗務区の話ですが)
ホームに停車中にすべての旅客を降ろせればよいのですが、たまに降ろし終わって乗務員室へ戻る間に乗ってくる人もいるので、そのまま車庫へ連れて入ることもあります。
車庫に入庫すると本来は車掌が車内の点検を行うのですが、これも面倒なのかほとんどの車掌がしないので運転士が仕方なく車内を見回ったりしています。(あくまで私がいた乗務区の話ですが)
その際に遺留品(忘れ物)と降り遅れの乗客のチェックを行います。
たまに検修庫(ピット)へ入るなど車両課の点検がすぐに行われることがあり、この場合は乗務員は直ちに車両から降ります。
その代わりに車両課の人が車内をすぐに見回り
「おーい、車掌さん!お忘れ者」
車内に取り残された人がいると、車両課の人に呼び止められたりします。
車庫などの場合には、こんな感じで車内に取り残されている人がいないのかのチェックを行います。
最終電車などで車庫へ入れずに駅に留置する場合も基本は同じですが、乗務員が留置の処置を行った後に駅の助役が懐中電灯を持って車内の点検を行います。
留置の処置ですからパンタグラフも降ろしているので、車内は真っ暗だから懐中電灯が必須になるのです。
でも助役が見て回るのは、遺留品(忘れ物)のほか車内が汚れていないかを見て回るのが主な仕事です。
何せ翌朝はそのままの状態で営業運転に使用されますから、飲み物がこぼされて床が汚れていないか、また嘔吐物がないかのチェックをきちんとしておかないと、朝から不快な気持ちでお客さんが乗車することになりますからね。
きちんと手順を踏んでおれば今回の幼稚園バスのように車内に取り残される人はいないハズなのですが……