2月4日、出雲市発岡山駅行きの特急「やくも8号」が8時13分頃、安来市内を走行中に運転士が異常を感じた。
1分間ノッチやブレーキ操作、気笛吹鳴などの運転操作を行わないとブザーが鳴りランプが点灯するEB装置が稼働していないことに気付いた。
いつもならそろそろブーって鳴るはずなのに鳴らないのはおかしい、と運転士は思ったのでしょうね。
異常だと感じた運転士は安来と米子の間で緊急停止し、おそらく運転指令(輸送指令)に連絡したのでしょうね。
駅間途中だったので米子駅まで運転して運転取りやめ、お客さんは次の「やくも」に乗り換え。
この影響で「やくも」2本が運休、他の特急や普通列車計4本が最大で1時間遅れた。
報道によるとEB装置は90日に1回点検し、約1か月前の点検では異常はなかった。
JRや第三セクターではEB装置が一般的で、私鉄ではデッドマン装置が一般的です。
EB装置は運転操作をしない時間が1分を超えた時にブザー等で知らせ、運転士がリセットスイッチ?を押すことで解除し運転が継続できるモノなのに対して
デッドマン装置はマスコンを上部から押すように握るもの、足で踏むペダル式、自然に握ればOKなものなど形状も様々だし、運転中はずっと握ったり踏まなければいなければいモノ、力行中だけで良いモノ、ブレーキ操作中は動作しないものなど各社でバラバラです。
ただEB装置であろうとデッドマン装置であろうと、装置が動作すればブレーキが自動的にかかります。
ちなみに私が在籍していた会社の車両は、マスコンの上部に飛び出たデッドマン装置を上から握るタイプのモノは、前後進レバーを中立位置にしていないと停車中でも動作しました。
それも電磁直通ブレーキで非常ブレーキが入るものだから、制動管が充気するまでに時間がめちゃくちゃかかりブレーキがなかなか緩解しないので困りものでした。
電気指令式ブレーキの場合もデッドマンを離せば非常ブレーキが入りますが、こちらは電気の回路なのでブレーキを非常ブレーキ位置にいったん入れて、握り直して戻せばすぐに緩解するのでその点は楽だったかな。
ちなみにデッドマン装置やEB装置をまとめて「緊急列車停止装置」と言うようで、体調に異変が生じて運転操作が不可能になった時や、運転士が病気等で運転中に亡くなった時でもこれらの装置によって列車を停止させられる、ということから設置されており、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の第79条3項に
と定められており、設置は義務化されています。
ただしこの条文が加えられた2006年以前に製造された車両に関しては努力義務となっています。
今回の特急「やくも」の件ですが、EB装置の故障が疑われ、また条文の趣旨からいうと正しい判断のようにも思えますが、お客さんにすれば本当に迷惑な話。
到着予定時間がかなり遅くなり、朝の特急列車だったからビジネス客も少なからず利用していたと思うのです。
条文には書かれていませんが実際の運用で言うと、(私は私鉄勤務だったから)デッドマン装置が故障した場合には、駅や乗務区の助役以上の人間を全区間で添乗させて運転するのが一般的。
運転士が体調不良だったり死亡した時の安全装置がEBやデッドマンですから、安全装置の代わりに横に監督者や別の運転士が添乗しておれば代わりになるし、止められるわけです。
電車の場合は車掌が扱う非常ブレーキスイッチや車掌弁が乗務員室内にはあり、万が一の異常時には添乗者がそれの装置を使って列車を止めることもできます。
今回の「やくも」号が運転を打ち切ったのは米子駅で、この米子には乗務区もある。
そう思うと運転打ち切りではなく、運転士または監督職以上を添乗させて運転を継続しても問題なかったと思うし、お客さんにも迷惑がかからなかったと思うのですけど。
安全が最優先なのは当然です。
でもこのところのJR西日本を見ていると、まったくお客さんのほうを向くことなく、自分たちがマスコミや世間から叩かれないための方法ばかりを模索しているようにしか見えません。
止めなきゃいけない場面では止めず、代替の方法を取るという選択肢を取らずに止めちゃったり、すべてがお客さんを無視して運営しているようにしか見えない。
表向きはすごく良い会社のフリして世間からの評判も良いけど、内情はかなり危険なことばかりしてたまたま大きな事故には至っていない(私がいた)会社もあるけど……