過走(オーバーラン)してバックできる時とできない時
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過走(オーバーラン)してバックできる時とできない時

運転士

停車場と停留場

過走(オーバーラン)に関する話はこれまでにも時々記してきましたが、そういえば書いていなかったなぁと思ったので、過走して停止位置を行き過ぎた時にバックして正規の停止位置に戻せる場合と、バックが不可の場合について書いておきます。

 

駅は大きく分けると「停車場」と「停留場」に分けることができます。

※停車場とは旅客が乗降する一般的に「駅」と呼ぶ場所のほか、信号場や操車場など指しますが、この記事では一般的に旅客が乗降する場所としての「駅」について書いていきます。

「停車場」は出発信号機や場内信号機のある旅客が乗降する駅を指します。

「停留場」は出発信号機や場内信号機が無い乗降する駅で、私が運転していた路線では場内・出発信号機の代わりに閉塞信号機が設置されていました。

そのため出発信号機の代わりに設置されている閉塞信号機を「出発相当(の閉塞)」、場内信号機の代わりに設置されている閉塞信号機を「場内相当(の閉塞)」と呼んでいました。

 

場内信号機や出発信号機は信号現示をコントロールできる信号機で、信号所の「てこ扱い」や「列車集中制御装置」などでコントロールされています。

出発時間や到着時間に合わせて信号現示するものです。

閉塞信号機はコントロールはできません。

列車の存在の有無や前方の信号機の現示状態によって自動的に現示されます。

 

 

バックして停止位置を修正できない要因

バックして停止位置を修正できない時として運心(運転取扱心得)には

  • 出発信号機を超えた時(先頭車両の一つ目の車軸が踏み込んだ時)
  • 列車の全車軸が閉塞信号機を超えた時(最後部の車両の一番後ろの車軸が超えた時)
  • 列車停止標識を超えた時(出発信号機を設置できない場所にその代わりとして設置する標識)

このように規定されていました。

 

ただし閉塞信号機を編成すべてが超えた時でも、後続の列車を停止させて安全が確保された場合はバックすることができます。

もちろんバックしようとする閉塞区間に後続の列車が入ってきていない時に限りますが。

よく後続の列車が接近していたので〇駅へバックすることができず、〇駅で下車予定のお客さんは次の×駅まで乗車してもらって引き返してもらった、なんてことが起きますが、都市部で運転間隔が短い場合には後続の列車に対して停止を命じても、接近しすぎていてバックすることが難しいので、次の駅へ進行させることが多くなるようです。

そのほか、今の新しい保安装置が高度になりすぎていることも一因かもしれません。

私が運転していた路線(会社)はATSでいろいろと制御はしていましたが、基本的にはそう高度なものではありませんから、バックして停止位置を修正できないということはありませんでした。

 

 

指令の指示によって停止位置を修正する

私自身が先ほどの規定に引っかかるような過走をしたことはありませんが、何度かは無線から流れてくる様子を聞いたことがあります。

通過列車と勘違いして停車駅を完全に行き過ぎたことがありました。

運転士からの無線では閉塞信号機を編成が完全に通り越している。

この時運転指令は後続の列車が前駅を出発したところだったために、常用制動で停止するように指示を出し、停止した場所を報告させた。

確認した運転指令が過走した列車の運転士に対して、停止位置を修正するように指示を出す。

この時は停止目標の場所まで下がらず、運転席がホームにかかる位置までバックして止めるように指示を出していました。

たまにあるんですよ、慌ててバックしたのは良いけど、今度は後部の車両がホームからはみ出してしまうということが。

今はホームドアや可動柵の関係から正規の位置へ停止させなければいけませんね。

 

そういえば出発信号機を1両ほど行き過ぎた列車に対しても、同じようにバックさせたこともあります。

出発信号機の内方(出発信号機より先)には分岐器(ポイント)がない駅だったために、バックしても支障が無いと判断したためです。

場内信号機の外方には渡り線がありましたが、修正し損ねて後ろへ行き過ぎないように、先頭車がホームにかかる程度に止めるように指示は出していました。

手順は先ほどと同じような感じでした。

さっさと停止位置を修正できても、やはり10分以上はかかってしまいますね。

 

 

乗務員の判断で停止位置を修正する

停留場を過走してホームを飛び出したが出発相当の閉塞信号機を越えていない、または出発相当の閉塞信号機を越えた車両はあるがすべての車軸は越えていない。

こういうケースでは車掌が後方の安全の確認した後に運転士に対して合図を送り、運転士がバックさせて停止位置を修正していました。

後方の安全というのは、軌道内で作業をしている作業員や踏切を渡る通行人(構内踏切だとお客さん)がいる場合、車掌が列車が後退することを知らせる(警笛だったり手笛だったり、手を振るなどの動作だったり)ことで、後退する列車との接触事故を防ぐためです。

 

私が運転士になった頃までは、規則上何の問題もないために乗務員の判断のみで停止位置の修正を行っていましたが、今は必ず運転指令に一報を入れるようにと指導されています。

運転指令や本社が把握する前に、SNSで列車が行き過ぎてバックしたなんて拡散されますからね。

その投稿を見た一部の人がすぐに本社等へ問い合わせしてくれるのですが、一報を入れてくれないと本社側は答えようがなく、本社から連絡を受けた乗務区側も事実が分からない、ということを防ぐためです。
※もちろんそれだけではなく、日勤教育……

私が担当していた路線の一部というか大半の駅では、誤通過を防止させるために停車列車に対して65キロとか45キロのチェック(ATS)を設けていましたが、路線の最高速度で運転していて通過列車と勘違いした時にこのチェックで引っかかると、ATSによって自動的にブレーキが掛かるのですが、そのチェックポイントを設ける位置がそもそも過走を完全に防ぐことを想定しておらず、3両程度はホームに残るようにという感じでした。

これならば車掌はホーム上の安全を確認しやすく、乗務員判断だけで速やかに停止位置を修正できますから。

ちなみに昔はこのケースで停止位置修正しても最大3分ほどの遅延に収まっていました。

※慣れた運転士は2分も遅延を発生させないけど、いったい何度過走すれば気が済むんだという話で…

こんな感じで運転士が車掌と〝協力〟してバックできる程度にしていたわけです。

私は運転士の時には3~4回は車掌と〝協力〟してバックしたと思います。

車掌の時には両手両足の指ではまったく足りないほど運転士に〝協力〟しましたけどね。

 

実は運心では認められていない、出発信号機を越えた場合も乗務員の判断でバックして停止位置を修正させても良いという、そんな駅もありました。

ラッシュ時間帯に時間調整のために列車を停車させる目的で設けられた場内・出発信号機のある駅で、通常は閉塞信号機と同様の運用をしていました。

駅の前後に分岐器があるわけでもなく、運転指令も乗務区の指導さんも過走した場合は乗務員判断で停止位置を修正しても良いと黙認していたという。

何十年も昔だからこういうことも行われていたんですよね。。。

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