故障・ATSが作動しなくなって開放状態で運転

運転士をしていると様々なATS関係のトラブルに巻き込まれることがあります。

本来動作する地点より何十メートルも手前でATS制動が動作して、緊急停車なんてことは何度も経験しました。

速度照査がおかしくて、既定の速度より低い速度で走っていてATSが動作したり。

運転士にも乗客にも迷惑なわけですが、会社的にはフェールセーフの設計がしっかり働いていると考えるようです。

もちろん論理装置の交換などの対応は取るのですが。

 

運転士にとっても会社にとっても困るのが、ATSが故障して動作しないことですね。

今のJRの車両はどうなのかは知りませんが、国鉄時代の車両ってATSのスイッチを入れなくても運転できたと言いますね。

ところが私鉄のATSは、ATSを切っている状態ではATS制動が入ったままの状態、つまりはATSを入れなければ運転不可。

今ではブレーキハンドルを挿入とか、マスコンキーを入れるとか、ドラムスイッチを「前」位置つまりは運転側に切り替えるとか、会社による違いはありますがとにかく自動でATSが投入されますので、通常はATSを切った状態での運転は不可能です。

でもATSの電源を投入しているのにブレーキが緩解しないとか、信号を受信しない状態が継続するといったATS車上子側の故障もごく稀ですがあります。

あとは人身事故や軌道内にいた動物との接触によって、信号を受信できなくなるというケースもあります。

ATSを切れれば良いのですが、ATSを切ればATS制動がかかりっぱなしになる私鉄のATSの場合、ATSを開放して運転します。

 

ATSを開放すると速度の制限が全く効かなくなります。

信号がR(赤)現示であってもATSは作動しませんから、ブレーキはかかりません。

速度計は通常通りに示します。

なお場内信号機がR(赤)の時に誘導信号機の現示によって入っていく場合や、入換信号機の現示(場内・出発信号機がR(赤)現示の場合)従って入換運転する時にはATSの開放は行わず、別のスイッチの投入によって運転します。

 

25年以上の運転士生活の中で、旅客を乗せた状態でATSを開放して運転したのは一度だけですので、正直詳しく覚えていない部分もありますが・・・

 

始発駅で出発信号機の現示がG(青)になってもATSブレーキが掛かったまま。

ATS電源を「切」「入」するためにドラムスイッチを何度も操作したが状況が変わらない。

列車無線で運転指令に連絡し、駅の助役を添乗させたうえでATSを開放して運転する。

速度は通常通り。

駅に到着するたびにATS電源を「切」「入」するものの状況は一向に変わらない。

途中の駅から乗務区の助役が添乗してきて、駅の助役と交代。

出発時に数分遅れ、車両の振り替え(交換)する駅に到着した際にも遅延状況は変わらず。

 

今の時代ならば乗車している旅客を全て降ろし、15Km/h以下の徐行運転で回送扱いとしていたでしょうね。

横には助役が添乗していて、いつもより気合を入れて喚呼して間違えのないように運転するのは当然ですが、思ったほど緊張しなかった記憶があります。

信号機の現示と現示に従った速度を守っておれば、特にATSにお世話になることもないわけですし、意外と冷静だった気がします。

ただATSを開放したことで警報音がずっと鳴り響いていたことが煩わしかったけど。

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