昨日(6月18日)の朝、大阪北部の高槻市近辺を震源とする地震があり、最大震度6弱を観測しています。
緊急地震速報をキャッチした運転指令所内の列車運行管理システム(早期地震警報システム)より、自動的に地震を知らせる列車無線を送信します。
列車無線の内容は「直ちに停止せよ」という自動音声で、これに従い運転士は常用最大制動(全制動)又は非常制動で停車します。
会社によっては早期地震警報システムによって自動的に停車させる装置になっているところもあるそうですが、私が勤務している会社ではこのような感じで運転士がブレーキ操作によって止めることになっています。
おおむね震度5を超えた場合には鉄道は運転を中止し、徒歩巡回による点検を行い安全が確認されてから運転を再開する手順となっています。
このために京阪神の各鉄道では地震発生後すぐに運転を中止しました。
徒歩点検を実施し、その後に試運転列車を最徐行で運転して、例えばATSの信号は正常なのか踏切は正常に動作しているかなどをチェックする手順となっています。
今回運転再開に時間がかかったのは朝の通勤通学ラッシュのため、運転本数が多かったことが挙げられます。
前述のとおり「直ちに停止」という指令ですから、最寄り駅まで運転するといったことは一切考えずに列車を止めなければなりません。
すると駅間で停車する列車が多くなってしまい、停車列車からお客さんを軌道上に下ろして最寄り駅まで誘導しなければならなくなります。
そういった列車が朝のラッシュ時間帯だったために多かったのが原因です。
避難誘導を運転士と車掌の2人で行うのは、実際のところ無理だと思います。
乗車している人が30~40人程度ならまだ何とかできるのですが、朝のラッシュの電車には1000人とか2000人が乗車しています。
私も乗務員時代には避難誘導の訓練は頻繁に行っていましたが、この訓練を行うたびに
「これは乗務員2人だけでは絶対に無理!」
って感じていましたよ。
たまたま乗車中の社員がいれば手伝ってもらえるかもしれませんが、実際には駅のほか乗務区などの係員、さらには本社などから急遽派遣された社員が手伝いに来てから避難が開始されますので、相当時間がかかってしまうのです。
テレビなどの映像でも、駅間途中に停車した列車からの避難誘導にハシゴが取り付けられていましたが、私が勤務していた会社の列車には大半の車両にハシゴなんて備え付けられてはいませんでした。
結局は車で応援部隊が現場に駆け付け、避難誘導に当たるのが一般的になっているのです。
電車のシートを外して滑り台のように設置して避難させていた会社もありました。
もちろんあれだって普段から訓練しているからできるわけですが、最近の電車のロングシートって途中に仕切り板が付いていたりして短くなっています。
7~8人分の長さがあるからできるのであって、あの避難方法も少しずつできなくなっているのかもしれません。
この方法にしてもそうですが、やはり乗務員2名だけで行うのは難しいです。
他の交通機関に比べて、乗務員1人に対するお客さんの数が多すぎるのですよ。
もちろん乗務員2人だけで避難誘導を行えと指示があれば、それをする覚悟は持って乗務していますよ。
たとえ混乱しようが、やらなきゃ仕方ないですから。
でも運転指令がそれを指示する勇気がないのです。
乗務員が勝手な判断で避難誘導させるのは危なすぎます。
全列車が完全に停止している状態を確認できるは運転指令だけですし、場所によっては停電させないと危険なこともあるのですが、停電していることだって指令でなければ確認できないのです。
最寄り駅へ避難させるとしても、例えばその駅が倒壊の危険があるといった情報は乗務員には分かりません。
結局避難誘導させられる状態になったことを指令が確認しなければ、乗務員の判断だけでは危険なんですよ。
避難誘導させられる条件は整ったと運転指令が判断しても、乗務員2人ではと尻込みするのもまた運転指令です。
多数の列車が本線路上に取りこされている状態では、運転指令が先にパニックになってしまうのです。
でも津波が迫ってくる危険性があるときは、乗務員で判断して避難誘導に当たってくれとなっています。
運転指令の指示を待っていては全員が命の危機にさらされるのですから。
もう少し本腰を入れて避難誘導のことを考える必要があるのではないかと思いますね。