運転士や車掌が列車を担当してきて交代の駅に到着します。
担当してきた乗務員が携帯品や乗務カバンなどを持ってホームに降り、交代する乗務員に異常の有無などを報告。
交代する乗務員は報告されたことを復唱して乗務員室へ入る。
というのが基本的な流れです。
異常の有無の報告には列車無線で指示された内容だったり、その車両に乗務していて気になったことなどを報告する必要がありました。
〇〇駅~△△駅間の××踏切付近に係員が立ち入るようです。
××駅のホーム端の立ち入り禁止区域に撮影者がおり、いま駅の係員が現場へ向かっているようです。
80km/hあたりになると振動がひどいです。
ブレーキの効きがもう一つです。
みたいな感じでしょうかね。
私がまだ若手だったころのベテランの車掌さんたちは、まずまともに引継ぎなんてしてくれません。
何があっても
「上等!」
の一言だけを残してそそくさと休憩所の方へ帰っていきます。
運転士になってからは「上等!」の一言で済ませてしまう人は少なかったのですが、それでも大多数の人は
「異常なし!」
の一言で済ませていた印象があります。
相手が先輩の場合は私の方から突っ込むようなことはありませんでしたが後輩が
「異常ありません!」
の一言で休憩所へ向かおうとしたときには
「この電車のブレーキ甘くなかったか?」
って聞き返したりしていました。
「はい、最後スーって伸びていく感じがします」
交代する乗務員に聞かれてから答えてどうするんだ!
って常々思っていましたが、引継ぎ時に必要な項目を一切引き継がない乗務員が、私が勤務していた乗務区ではずっと大多数を占めていました。
でもブレーキの効きが悪い車両の引継ぎ時だけは、ベテランの運転士の方は
「甘いで!」
の一言だけは言ってくれていましたが。
私と仲の良い乗務員はみんなきちんと引き継いでいましたよ。
〇〇駅~△△駅間の××踏切付近に係員が立ち入るようです。
→××踏切係員が入りますから、真横で警笛をよろしく!
××駅のホーム端の立ち入り禁止区域に撮影者がおり、いま駅の係員が現場へ向かっているようです。
→××駅の端っこにまたカメラマンが入ってるみたいです。いつものおっさんかな?鬱陶しいから追い払ってください。
→80km/hあたりになると振動がひどいです。
80くらいになると変な振動があるから、90以上キープで走ってください。
→ブレーキの効きがもう一つです。
ブレーキ甘いですから、塩をいっぱいかけてください。
仲が良いから冗談っぽく言いますが、一応必要な点を強調して引き継いでました。
それぞれ乗務員が仲の良い間柄だったらこのような感じで引き継いでいるのだろうと思っていたのですが、助役になってからその様子を見ていると
「異常ありません」
しか言ってないんですよね。
昔より車両の性能が上がっているから?
故障があまり発生しなくなったから?
車両ごとの個性が減って性能差がほぼ無くなったから?
運転指令が必要なことならば繰り返して無線を流すようになったから?
それとも
私が所属していた乗務区の悪しき慣習だけが引き継がれているから?
ただ単に引継ぎでたくさんしゃべるのが面倒だから?