京都丹後鉄道宮津線ですべてのブレーキが利かなくなり、逸走するという重大インシデントが発生しました。
10月4日午後9時5分ごろ、丹後由良―栗田間で異音を感知した運転士が非常ブレーキで停車。
降りて点検しようとしたところ列車が転がりだした。
運転士はブレーキ弁ハンドルによる通常の非常ブレーキのほか、保安ブレーキと車掌弁といった緊急用の制動装置を使用したがまったくブレーキが利かなかった。
後の調査で、車輪に制輪子(ブレーキシュー)を押し当てるためのブレーキシリンダー(圧縮空気で動作)の付け根部分が破損し漏気、その周辺には動物の毛が付着していたそうです。
異音を感知して非常ブレーキをかけたそうですから、鹿やイノシシなどの野生動物と接触した可能性が大ですね。
鹿やイノシシといった大型の動物と接触すれば、空気管や肘活栓などの破損は避けようがないですし。
それより問題なのが、緊急用のブレーキ装置を用いてもまったくブレーキが利かなかったことですね。
鉄道車両には運転士のハンドル操作でブレーキが利く常用制動と非常制動のほか、車掌が危険を察知した場合に操作する車掌弁や非常ブレーキスイッチ、保安ブレーキは常用制動に用いるエアタンクとは別のエアタンクを用いているブレーキ装置を装備していて、電磁弁を介して動作させる保安ブレーキのことを予備直通ブレーキと呼んだりもしています。
たくさんブレーキ装置を積んでいるわけですがどのブレーキを使用しても、最終的には圧縮空気をブレーキシリンダーに送り込み動かすことでブレーキシューを車輪またはディスクに押し付けて停車させます。
今回ブレーキシリンダーの付け根あたりで漏気していたということですから、どのブレーキを用いてもブレーキは動作しないということになるのです。
ふつうは車両1両に2つの台車があり、各台車にブレーキシリンダーが装備されています。
1つのブレーキシリンダーの根元から漏気がありブレーキが利かなくなっても、もう一つの台車に付いているブレーキシリンダーは正常に動くはずなのですが。
ただ古い車両の中には車両1両にブレーキシリンダーが1つだけというものもあり、京都丹後鉄道の車両がどのような形状になっているのかは知りませんのでどうなっているのかなぁと。
私自身、列車を運転しながら
「今どのブレーキも利かなくなったら・・・」
って考えることもあったわけでして、それが現実になったらやっぱり恐怖でしょうね。
私が担当していた列車は1両(単行)ということはなく2両以上連結していますから、1両のブレーキシリンダーがダメだったとしても他の車両のブレーキシリンダーが生きておれば停車することはできます。
今回の京都丹後鉄道でも2両以上で運転しておれば停車させることはできました。
でもローカル線で経費をできるだけ抑える必要性から言うと、できれば単行で運転したいということになってしまいます。
国鉄の車両についていた手ブレーキ(ハンドルを回してブレーキシューを操作)が付いていれば良かったのかもしれません。
それ以上にちょっと引っかかるのが、今回の事案について会社の公式HPやSNSなどには一切言及が無いんですよね。
会社側の責任の有無には関係なく、旅客を乗せた列車においてブレーキが一切利かない状態で逸走した事実があるのに、いまだに宣伝しか掲載しないという会社の姿勢には疑問しかないです。