私が運転士見習だったのはもう30年以上昔のこと。
その当時の指導員(師匠)の中には厳しいというのを通り越して、いまならばパワハラだと訴えられてもおかしくないような言動をする指導員も数多く存在しました。
「アホか!そんなところでブレーキ入れたらキレイに止められるわけがないやろ!」
「階段(ブレーキを少し緩める)が早すぎる!行き過ぎるやろ!」
なんて言葉は優しい方で、ボケ!とか死ね!とか張り倒すぞ(はったおすぞ)!とか、いまなら事件化しそうな言葉が乗務員室内で飛び交うことも珍しくはありませんでした。
それだけではなく、指導員はよく丸めて袋に収納したままのフライ旗(赤白の手旗)を持って指導に当たっており、言葉ではなくフライ旗でコンコンとブレーキハンドルを叩いてみたり、酷い人は乗務員室内の床などを思いっきりぶっ叩くようなこともありました。
さすがに見習を直接叩くようなことはしないですけどね。
そういえばJRの方に聞いたところによると、国鉄時代からJRの初期の運転士の教導さんはディスコン棒を片手に指導に当たっていたとか・・・
ちなみに私の運転士指導員はおとなしい方で、フライ旗を持つこともなく平穏な状態で見習についていました。
ただ私より年下の運転士の中にも、血気盛んな人は当然いるわけでして・・・
私より5~6歳年下の人がはじめて運転士の指導員として見習の指導に当たっていたのですが、さすがにフライ旗を持つことはなかったけども言葉がメチャクチャ荒い人がいまして。
また声も大きいから客室にまで見習を怒鳴り散らす声が響いていたようなのです。
ある日その指導員に対する苦情が来たようで
「あのような汚い言葉で罵る指導が福知山線脱線事故の遠因ではないのか!」
たぶん本社へ苦情が寄せられたのだと記憶しているのですが、車掌・運転士を問わず指導員の資格を持つ乗務員に一斉に口頭による指導がありました。
私はそのころにはすでに指導員として見習を指導することはなかったのですが、けっこう厳しく指導されましたよ。
※その助役らによる指導の言葉もダメなんじゃないかと思ったのは内緒です
たしかにきつい言葉で指導したからと言って、見習がキチンと運転できるようになるなんてことはないです。
指導員が意図したどおりの運転を見習がしないことに対して、その腹立ちやイライラを解消するための言動でしかありませんからね。
でも本当に叱らなければならない場面において、いまの指導員は叱れなくなっているという現実もあるようです。
それが事故だったり人命の危機に直結する可能性があるとき、たとえば気笛の吹鳴を忘れていたとか、非常ブレーキを入れるタイミングが遅すぎたとか、工事等による徐行箇所までに速度を落とせなかったとか。
そういう時は大声で叱ることも必要だけど、いまは上から指導に関してきつく言われているために叱りにくいと言いますからね。
このあたりも運転が下手な運転士が増加している原因なのかもしれません。