昨日(2022年10月20日)東海道新幹線品川駅において、存在しないはずの列車が在線していると運行管理システムに表示されたため、品川駅へ向かっていた品川始発の「のぞみ79号」の回送が駅手前でストップ。
「のぞみ79号」は52分遅れで品川を6:52に出発した。
いないはずの列車がいるような状態になることって、乗務員をしていると何度も経験します。
レールに微弱な電流を流しておき、車両の車輪が車軸を通して二本のレールの電流を短絡することで、その区間に列車が存在していることを示します。
一般の鉄道では車軸によって軌道を短絡することで信号をR(赤)にします。
新幹線は超高速で走行するので信号機を目視で確認するなんて不可能ですから、自動列車制御装置(ATC)によって制御されますが、原理は同じです。
しかしたまにですが、列車が実際には存在していないのに起動回路を短絡する事象が発生することがあります。
回路の故障によるものがもっとも多いかな。
絶縁不良とかインピーダンスボンドの故障とか。
それとちょうど今の季節、急に気温が低下することでレールにひびが入ったり折れてしまうことがあるのですが、するとレールに微弱電流を流そうにも流れなくなります。
微弱電流が起動回路を流れない状態は、車軸によって起動回路を短絡させたのと同じ状態になるため、この起動回路の手前の信号機はR(赤)となります。
私がいた会社では起動回路の短絡なんて言い方はせず「トラック落ち」と呼んでいました。
起動回路(トラック)が正常に機能せずに落ちることからこう呼ばれます。
レールのひびや折損は急激な気温の低下のほか、金属疲労もあるし大型車両が頻繁に通行する踏切でも起こり得ます。
回路の故障を防ぐためには電気・通信系の係員による地道な保守点検と、工務系の係員による地道な徒歩点検でレールなど軌道を保守点検するしかないです。
車両に各編成固有のIDタグが取り付けられていて、どの編成が今どのあたりを走行しているのかを監視できるシステムが導入されている会社もあります。
新幹線ならば導入されているはずです。
このIDをきちんと監視しておれば、車両による正規の軌道の短絡ではないことはすぐ分かりはしますが、何が原因で在線していないはずの車両がいる状態になっているのかは、やはり現場へ行ってチェックしない限りは分かりません。
そして一つの起動回路の区間(在来線ならば信号機から信号機までの区間)を細かく点検しないと、原因も分からないし復旧のさせようもないですよね。
私がいたのは関西のしがない私鉄でしたが、今回のような事象の場合は
R(赤)を現示している信号機の手前で停車する。
すでに線路に異常がないことが確認されている場合には、1分以上停車したのちに運転指令に停止現示が出ている区間の内方への進行の許可をもらいます。
許可が出れば15km/h以下で進行します。
次の信号機がG(青)など進行を指示する信号の現示がある場合、列車の最後部が次の信号機を通過するまでは15km/h以下で走行し、通過し終われば信号機の指示速度まで速度を上げることができます。
今の時代ならば、今回の新幹線のように完全に復旧させるまで運転は再開しないかもしれないですが、私がいた会社では復旧作業と列車の運行を同時に行うことが多かった。
するとそれはそれで別のトラブルに見舞われることも多々あるので、乗務員の立場からは完全復旧まで止めてほしいと思っていました。
でもお客さんの立場からすると、とにかく動かせ!ってなる気持ちも分かるし……