私服で乗務員室へ“添乗”

私服で乗務員室へ添乗してくると言えば、以前にも書いた本社の役員クラスの連中がいます。

ふつうのスーツを着て、胸元には小さな名札が付いているだけ。

毎日通勤のために同じ列車の運転台に添乗してくるので、その列車のことを「お召列車」なんて揶揄していました。

運輸部門の役員で少しでも運転士の経験がある人もいるのですが、全然関係のない部署の役員なんてただ前に乗りたいだけなのでは?って思いますよ。

実際に私が駅勤務のころ、たまに駅に苦情が寄せられていましたから。

「なんで毎日〇時〇分の電車の前にスーツのオッサンが乗ってるんや?」

当社の役員で・・・なんて答えたら

「こっちは金を払ってぎゅうぎゅう詰めの電車に乗ってるんや!俺も前に乗せろ!」

とか

「そいつをぎゅうぎゅう詰めの車内に乗させて、毎日みんながどんな思いをしているのかを感じさせろ!そうすればもう少しダイヤを見直して、俺らも楽に乗れるようになるんや!」

そういう声は本社に届いていないのか、はたまた役員の耳に入れないようにしているのか分かりませんが、役員が乗務員室に添乗して出社する光景はずっと変わらず見られました。



先の役員の話は会社の規定で添乗できる決まりになっているのですが、絶対にダメなのに乗務員室へ私服で“添乗”してくる人がいました。

それは私が車掌をしていた昭和50年代の話です。

夕方の帰宅ラッシュの電車を担当していると、超ベテランの車掌さんが私服のまま乗務員室に乗り込んできます。

そして運転台側の遮光幕をおろし、運転台の椅子もおろして座ってしまうのです。

「ちょっと混んでるから乗せてな」

あとで聞いたのですが、この車掌さんは普通のサラリーマンの時間帯でしか仕事をせず、帰りの電車は帰宅ラッシュにぶつかるために必ず私服で乗務員室(車掌室)に乗り込んできていたというのです。

担当しているこちらはヒヤヒヤしながら仕事していましたし、これで苦情でも来たらどう対処すればいいんだろうってホントに思いました。

20歳そこそこの初心者マークが付いていてもおかしくない車掌が、30歳以上年上のベテランに注意することもできずにただ黙っているだけでした。

結局私はこのことを上司に報告もできずじまいでしたが、数日後に他の車掌が上司に報告して発覚。

そのベテラン車掌は厳重注意となりました。

※今なら降格と他の部署へ異動くらいにはなるのかな

上司に報告しなかった私はベテランの人たち仲良くなって出世もほぼしませんでしたが、上司に報告した同い年の車掌は今は駅長をしているそうです。