優等列車とは通過駅のある列車のことで、普通列車や各駅停車以外の列車のことを指します。
ふつうに考えれば通過駅があるということは、それだけでも各駅停車よりは所要時間が短いと思われがちですが、昔は本当にひどいとしか言いようがないような優等列車が設定されていた、私が担当していた路線。
運転するのも本当に大変でした。
ダイヤ(列車運行図表)を見るとたしかに途中のA駅で各駅停車を追い抜いてはいます。
でも一本一本の列車を表す線の傾き方が、その優等列車はどう見ても各駅停車と同じ、または緩やかに書かれています。
各駅停車を追い抜いてから次の停車駅Bに停車するまでの時間と、追い抜かれた各駅停車が優等列車の次の停車駅Bに到達する時間は、何と各駅停車のほうが短い。
追い抜いて普通列車が発車するまでの時間は2分ほど設定しているけど、優等列車が停車するB駅で見ると1分40秒ほどの差に短縮されている。
その優等列車は止まらないだけで超鈍足だったのです。
朝のラッシュ時間帯のど真ん中に設定されていた優等列車ですが、とにかくゆっくり走るもののスタフに書かれた通過時刻よりどうしても早くなってしまう。
できるだけ頑張ってゆっくり走るのですが本当に難しかったし、あまりにも遅い電車だから睡魔が容赦なく襲ってくるし。
それだけではなく、その優等列車を何とか定時で停車駅Bに到着させても、今度は別の各駅停車がまだ停車しています。
朝ラッシュの時間帯なので各駅停車の出発が遅れてしまっており、本来は連絡しない列車なのに連絡してしまうのです。
連絡しておいて、数駅後のC駅ではその各駅停車をまた追い抜いていくという変な状態に。
連絡しないはずの各駅停車が遅れてることで連絡してしまい、こちらの優等列車の出発が遅れる。
すると先ほどA駅で追い越した各駅停車が追い着いてしまい、B駅で連絡してしまうという無茶苦茶な状態。
ここまでひどい優等列車は、私が運転士になって数年後のダイヤ改正では姿を消していましたが、それでも日中の各駅停車より所要時間の長いラッシュ時間の優等列車はその後も存在していましたしね。
この手の優等列車を担当していて何に気を遣うのかって、あまりにゆっくりと通過することで、待避駅で待っている各駅停車が出発してからずっと黄色の信号機ばかりを追いかける状態にならないようにということです。
Y現示(黄色)の次の信号機はR(赤)現示になっている個所が多く(一部はYY現示(黄黄)の個所もあるけど)、運転士はRが現示されているものとして運転しますから、けっこう神経を使うのです。
だから追い抜く時は出発信号機とその次の閉塞信号機だけは早めに通過して、各駅停車の運転士にできるだけ神経を遣わせないように運転していました。
このあたりは運転士同士の阿吽の呼吸というところでしょうか。
追い抜く時はできるだけ速度を上げて通過し、その次の通過駅は多少早く通過しても良いから、とにかく各駅停車の負担を軽くしてあげる。
そしてその後はほぼノッチを入れることなく、ただ転がすだけ。
下手すると自転車に負ける速度で転がすことも。
今はこういうことはできません。
何があってもダイヤ通りに運転しなければいけません。
他の運転士に気を遣う前に、今は沿線の人に対して気を遣う必要があるのです。
それはまた次回以降に書いていきます、忘れていなければ……