東海道線救急隊員死傷事故
2002年11月06日 JR西日本・東海道本線・塚本~尼崎間で起きた救急隊員と列車との接触事故を覚えておられる方も多いでしょう。
軌道内に立ち入り遊んでいた中学生2名のうち1名が、下り「新快速」に轢かれて重傷を負いました。
救助のために軌道内へ入っていた大阪・淀川消防署の救急隊員6名のうち2名が、下り「スーパーはくと11号」に轢かれ、1名は死亡し1名が重傷を負った2重の死傷事故です。
現場に急行した駅員と運転指令それに列車運転士との間の連携がうまくいかず、さらに列車が接近してくることを知らされていなかった救急隊員が事故にあうという、JR側の不手際によって起こった事故と言わざるを得ないものでした。
この事故があるまでは人身事故等によって軌道内に救急隊員や警察官が立ち入っている場合でも、列車を完全に停止させてしまうことは稀でした。
ほとんどは15㎞/h以下または25km/h以下で事故現場を通過するのがふつうであり、人身事故にあった人を軌道外へ搬出するために一時的に抑止する程度でした。
現場検証も列車を徐行させて行っていましたし、人身事故で今のような長時間の遅延や振替輸送が行われるなんてことはほぼありませんでした。
鉄道社局によって対応の仕方が違う
私が勤務していた会社では、駅構内以外での人身事故については駅員はノータッチで、駅のホームから飛び込むといった人身事故の場合についてのみ、駅員も処置を行っていました。
踏切など駅間での人身事故については乗務区の助役が現場で処置を行いますが、到着するまでに運転士と車掌の2名で処置を行います。
※今は違うかも
列車を基本的に止めずに軌道内で事故の処理を行うため、助役が警察官に対して
「そこ下がれ!危ない!」
って怒鳴ることもしばしばありました。
そうしないと接触事故の危険がありますからね。
こうすることによって長時間の運転抑止を避けることができていたのです。
※連絡のミスももちろんあり、東海道線救急隊員死傷事故と同様の死傷事故が起きてもおかしくはなかった。私自身、事故の連絡を一切受けずに走行していて、現場検証中の警察官と接触しそうになったことがあります。
人身事故で運転見合わせが長引くのは警察と消防からの要請のため
ところが救急隊員の列車接触事故以降は、警察や消防のほうから列車の運転を止めるように要請してきます。
接触事故があったのですから当然ですね。
たしか各警察本部や消防本部から各鉄道会社に対して、人身事故によって軌道内に警官や救急隊員が入る場合は必ず列車を抑止(運転見合わせ)するようにとの通達があったように記憶しています。
私が勤務していた会社は、その要請に対する返答が遅いと警察本部から怒られたなんて話もありました。
警察や消防は鉄道を利用する旅客のことなんてまったく考慮しませんから、現場の警官や救急隊員は長時間にわたって列車を止めることなんて気にしません。
警察も消防も自分たちの仕事であり、危険な目に遭いたくはないのも当然ですしね。
列車の運転抑止の要請をしだした当初は、2時間以上止められていましたが、今でも1時間は止まっている感じですよね。
昔なんて短ければ10分以内の乱れで収まっていましたからね。
福知山線脱線事故は毎年事故のあった日にマスコミで取り上げられますが、この尼崎救急隊員死傷事故が取り上げられることはありません。
鉄道に従事する人間にとっても、鉄道を利用する旅客にとっても、いま鉄道を長時間にわたって抑止させる原因となった事故なのですけどね。
人身事故によって足止めを食らって駅員や車掌に文句を言う人もいますが、こういった事件がきっかけになったことを知っておいてもらいたいです。