早いもので、あの信じられないような脱線事故から18年を迎えます。
事故前日に福知山線(JR宝塚線)の尼崎~伊丹間を利用し、あの脱線事故の現場のカーブに明らかに速度超過で進入していたし、往復ともに最後部の車両に乗車していて、カーブを抜ける前にノッチを入れてかなり揺られました。
往復ともに同じような運転をしていたから、これは日常的にこのような運転をしているのだろうなと思っていたところ、翌日に脱線事故を起こしました。
あれだけの大事故を引き起こしたJR西日本のダイヤは、事故以降はかなり余裕のある設定に変わりました。
同路線の回送列車はあまりにも設定運転時間が長すぎて、さすがにやり過ぎだとの声が現場から上がったなんて話も聞きました。
日勤教育もかなり改善したとは思いますが、今では風通しも良い企業に生まれ変われたのでしょうか。
この福知山線脱線事故以降、私が勤務する会社においてもお客さんの視線がメチャクチャ厳しくなり、それこそ速度を厳守して運転していても、いつもより揺れたが速度オーバーしていたのではないかといった、それこそ濡れ衣を着せられることが極端に増えました。
JR西日本と並行して走る別会社でもこのような状況でしたから、JR西日本の現場で働く社員たちはもっと厳しい状況に追い込まれていました。
乗務中に「殺人電車」とか「人殺し」と叫ばれることがあるとか、乗務交代のためにホームにいる時にも同様の罵声が浴びせられるほか、わざとぶつかってくるような人もいたようです。
私の知り合いで、この事故当時は駅で助役?駅長代理?をしていた人がいて、苦情や罵声のほかお客さんの視線に耐えられなくなって病んでしまい、しばらく入院していました。
たしかこの方は運転士をしていた時は京橋電車区に所属していて、福知山線脱線事故を起こした運転士と同じ電車区だったことから、相当責任を感じていたようでした。
他にも当時のJR西日本の社員の中には、マスコミで報道はされませんでしたが体調を崩す程度では済まなかった人もおられますし、本当に現場で働く人たちは大変だったと思います。
この事故以降は速度の厳守が日本中の鉄道会社で徹底されていると思いますから、少しは教訓になったのかなと思います。
福知山線脱線事故の直接の原因である、70キロ制限のカーブに116キロで進入するような無謀な運転はないにしても、昔は10キロから15キロ程度の速度超過は日常茶飯事だった事実もありました。
どう考えても速度超過しなければ遅延回復できない遅れの時に、実際に遅延を回復を行うと
「よく取り戻してくれた!」
なんて感謝の言葉を監督者からもらうことも普通でしたから。
今運転士や車掌として乗務している人の中には、事故発生後に鉄道会社へ入社した人も多くなっています。
今の運転士は速度超過を行うようなこともないでしょうし、曲線部にもATSを設置している個所もあります。
でも事故の教訓を監督者や管理職だけではなく、今現場で働く乗務員や駅員とも本当に共有できているのかな。
JR西日本だけではなく、他の鉄道事業者でも事故の教訓って共有できているのかな。
速度や運転操作の面だけに目が行きがちになっていて、日勤教育に代表されるような精神の〝締め付け〟はどうにも手付かずになっている気がするけど、それは私がいた会社だけ??
草むしりはさすがになかったけど、運転士が軌道内の標識整備のために長時間歩かされるといった見せしめ的な〝教育〟はあったし、指定された本の指定された部分だけを読んで感想を書くように求められたり(指定され個所以外には管理職側に都合が悪いことが書いてある)
一度でも〝教育〟の対象になるとその先ずっと評価が低いままに据え置かれたりと、〝教育〟という名の〝懲罰〟が福知山線脱線事故以降も継続して行われていた会社に所属していました。
私が助役から傍系会社へ移った2014年の時点では、運転上のミスはすべて精神的な問題との考えが残っていて、どうやればミスを減らすことができるのかといった視点の教育は行われず、どうやれば意識を持続できるのかを自分で考えて書かせるといった、精神論に近い〝教育〟しか行っていませんでした。
ミスによって2~3週間ほどの〝教育〟を受けたベテラン運転士が、なんとか復帰したもののハンドルを持つと手の震えが止まらなくなるとして、結局別の部署へ異動したということもありましたし。
一時期はミスを犯せばすぐ乗務職場から別の部署へ異動させるということが行われていて、表面上は〝教育〟のために一時的に乗務から外していると説明されていたけど、実際には〝教育〟なんて行われず助役等によって異動に同意するように求められる〝説得〟が行われていました。
異動を認めるまで乗務から外された状態が続き、異動を認めた瞬間に〝教育〟は終了し翌日から別の部署へ行くということが当たり前のように行われていました。
労働組合に今のやり方はおかしくはないかと言ったところで、
「本人が異動をすると言っているのだから組合が出る出番はない」
と会社が行っていることを認めていましたから。
私が乗務職場にいた2014年まではこういったことが平然と行われていましたが、今は少しはミスに対する本当の教育は行われるようになったのかな。
失敗した者は排除すればよいとの考えは改められたのかな。
福知山線脱線事故の直接の原因である速度オーバーはほとんど起こらないとは思います。
でも年々一日の乗務量の増加と休憩時間や仮眠時間の削減といった、詰め込んだ仕業(シフト)が増加していることから疲れが蓄積され、一瞬眠気に襲われることでの過走・停止位置誤り(いわゆるオーバーラン)が多くなっている気もするし。
こういったミスに対する〝教育〟はどうしているのかなと思うのですが、乗務中は常に緊張感を持てといった精神論がまたまかり通っているのか、はたまた他の部署へ飛ばすことで〝解決〟としているのか、ちょっと気になります。
仮眠時間4時間以下で約24時間勤務を繰り返す乗務という仕事だけど、会社としては自動運転を見据えているからもう運転士なんてどうでも良いと考えているのかな。