運転士になると添乗される機会がかなり増えます。
助役などの列車区の人間をはじめ、事務方の制服組、本社の人間(制服ではなく私服のスーツで)
あとは監査の時は国交省のお役人(運輸局の係官)
それに工務や電気や車両といった、現場で働く他の部署の人たちです。
工務(土木系)の人や電気・通信関係の人が添乗してくると、運転士見習のころ学科教習で習ったことなどを聞いてみるのです。
するとね
数か月かけて習ってきたことが、実は全くのウソだったことが判明したりするんです。
学科教習の時に
「架線柱に落雷があったことが分かるような機器が取り付けられている。その機器があるから停電もしないし、あとでどこに落ちたのかが一目でわかる」
私は停電はするだろうと思っていたので、そのことを電気の人に聞いてみると
「は?停電しないわけがないし、そんな機器が無くても落雷すれば真っ黒こげになるからねぇ」
とあっさりウソだったと判明することが多かったですよ。
逆に学科教習で習わなかったけど、「現場ではこういう扱いをすればいいよ」的なこともよく聞きました。
車両故障の時の取り扱いは本当によく車両の方に聞きましたよ。
私が習った頃は取りあえずパンタを下ろして、床下に行って処置を行うってのが基本でした。
でも電車って高圧電流で動作する機器を、低圧電流で制御するようになっています。
MGは直流1500Vで動いてるけど、乗務員室や客室内の配電盤の低圧回路のスイッチ(NFB ノンフューズブレーカー)を切ればOKとかね。
これが学科教習だとパンタを下ろして、床下の低圧回路のスイッチを切ってからMGのメインスイッチを切るとかね。
古い車両だとCP(コンプレッサー)なんてパンタを下ろしてから床下の低圧回路のスイッチを切ったあと、CPの大きなフューズを抜き取るなんて作業がありましたからね。
CPの場合も乗務員室や客室内の配電盤にあるCPやガバナの低圧回路のスイッチを切ればOKとかね。
あとは公表できないいろいろな裏技的なことも教えてもらたりしていました。
工務(土木系)の係員にも本当にいろいろなことを教わりましたよ。
「ここの橋梁は古くなってきていて、2本目の橋脚が少し沈んでいるからガクンと揺れる」
「あそこの地層は粘土質で、雨が降ってもなかなか雨水がしみ込まない」
「○○カーブは制限速度を少々超えても大丈夫だが、○○カーブは10㎞/hも超えると本当に危ない」
などなど
運転士を辞めるまで、ずっといろいろなことを教わり続けていました。
ただ他の部署の係員でもベテランの方は相手から話をしてきましたし、本当に話をしていても楽しかったのですが、若い人は話をすること自体を嫌がっていると言います。
運転士も若い人たちは、誰かが添乗してきても一言もしゃべらないと言っていましたし。
勿体無いと言うか、向上心がないと言うか、殻にこもっていると言うか・・・