車内への放送
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車内への放送

私が車掌のころは、車内への放送は決められたこと以外は放送してはいけませんでした。
もちろん事故など緊急時は別ですけど、普段の放送は本当にそんな感じでした。

 

ある時夕方の帰宅ラッシュの時間に人身事故が発生し、ダイヤがこれでもかと乱れた時のことです。
今とは違って人身事故程度では振替輸送なんて実施することはなかった時代です。

 

列車が団子状態になって、少し進んでは止まるを繰り返していました。
それで私は
「お急ぎのところ恐れ入りますが・・・」
のような定型の文章ばかり放送しているとお客さんから
「もっと気の利いたことを放送しろよ」
と大声で怒鳴られました。
そりゃお客さんにすれば、目的の駅には何分ごろ到着するのかが一番知りたいことですからね。

 

私は何を放送すればよいのかを考えました。
そして
「〇〇方面へお急ぎの方は、別料金となりますが××駅で△△線にお乗り換えください」
と放送したのです。

 

たまたまこの電車に乗り合わせていた本社勤務の人間が
「車掌が他社線へ誘導するような放送をした!」
と乗務区へ報告してくれたおかげで、私は乗務区へ戻ってこっぴどく怒られました。

 

「決まった放送以外はしてくれるな」
という言葉に続いて
「良かれと思って君が放送しても、他の車掌が同様の放送をしなければ今度はそれに対して苦情が来る。ふつうに仕事をしていてもサボっていると映るのだよ」

 

今ならば放送内容について問われることはあっても、機転を利かせて放送したことに関して咎められることはありません。
それどころか定型文以外を放送するほうが、仕事ができる車掌であるという認識に変わっています。
昔はお客さんより内輪で揉めることを嫌い、今はとにかくお客さんからの苦情を嫌います。

時代ってやっぱり変わっているのですよ。

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