雪の日の運転
今冬は気温が低い日も多いですし、雪の量も例年より多いようですね。
ということで今回は雪の日の運転についてです。
私は関西の私鉄で勤務していたのですが、雪が積もって輸送障害が起こるということは滅多にありません。
ですので雪や雨に関係なく一定のブレーキ力を持つ鋳鉄のブレーキシューは使わず、減りが少なくて音も比較的静かなレジンシュー(合成シュー)を使っていました。
さらに耐雪ブレーキといった降雪時対策の装置もありませんでした。
- 鋳鉄は鉄を主体に炭素を含む金属で、鋳鉄シューは雨や雪といった状況でもあまり変わらない制動力を誇ります。ただし高速域でのブレーキ力は貧弱で、速度が低下するごとに制動力が増す特徴があります。
- レジンシューは鋳鉄に樹脂などを加えたもので、高速域から低速まで制動力がほぼ一定という特徴があります。ただし雨や雪に弱いという欠点があります。
- 耐雪ブレーキとはブレーキシューを車輪踏面やディスクに軽く当てた状態にし(50kPa程度)雪がブレーキシュー等に残らないようにするためのもの。
もう何年前になるでしょうか。
降り続く雪によって視界は悪く、レールも枕木も信号機もすべてが雪に覆われて真っ白な状態でした。
私はVVVF車で各駅停車を担当していました。
VVVFって空転せずに走るとか、制動力も安定しているといった触れ込みで走り出したはずが、実際には空転はしまくるしブレーキも安定しなかったですね。
電気ブレーキが切れて空気ブレーキになるタイミングがそれまでのチョッパ制御車より低くて、温まっていないレジンシューではどこに止まってくれるのかが分からない状態でしたからね。
雨でも怖かったのですが、雪は一層怖かったのです。
場内信号機のY現示(黄)に合わせて必死で45㎞/hにまで落としました。
通常45㎞/hだと制動距離は100mなのですが、電気ブレーキは安定しないし空気ブレーキもまったく頼りにならない状態。
なので150mくらいからブレーキを入れたのですが、ウインウインとうなるだけでなかなか速度が落ちてくれない。
これは危険だと判断して非常ブレーキを投入。
非常ブレーキは空気ブレーキなので、おそらくブレーキシューが温まってなかったからでしょう、体感的には全く速度が落ちずに滑っていく気がしました。
この時は本当に
「適当にどこかに止まってくれ!」
って祈りながら手を合わせましたよ。
何とか停目(停止位置を表す標識)を5mほど過ぎた位置で止まってくれました。
ほぼホームの端っこでしたから、あと1mほど行き過ぎればオーバーランだと叩かれたかもしれません。
※ちなみにオーバーランだなんて表現をする鉄道会社はありません。
雪の日の運転と言えば、この時の一件が最も印象深いかな。